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「ヒト夜の永い夢」柴田勝家
苦手な柴田勝家、
第51回星雲賞の候補作にもなった2019年刊の書下ろし長編。然しこれは傑作。壮年の南方熊楠を主人公に、思考する自動人形("天皇機関")を創ろうとする秘密結社の起こす事件の数々と、来る大戦に向かう歴史が絡み合う。超能力研究で知られる福来友吉、昭和の天一坊と呼ばれた堀川辰吉郎、戦後を代表する某作家の祖母として知られる平岡夏子など少しマニアックな人達から、江戸川乱歩、宮沢賢治、佐藤春夫など著名どころ、北一輝、石原莞爾という大物などが登場し、書かれざる...あるいは在りうべき?もう一つの日本史が描かれる。昭和初期の雰囲気を独特の節回しを使いながら、博物学者の熊楠を主人公にすることで"因縁曼荼羅"が出来ていく様子は愉しいし、本作の空想科学小説たる基本アイデア(伏せる)も意味を持つ。全体的には活劇感が強くて舞台演劇風の書割的チープさが特徴(それが本作にはあっている)だが、エピローグはとても美しく、読後の余韻も心地よいのであった。
現代・近未来モノより明治大正昭和初期の伝奇モノって、柴田氏と相性良いのでは?と思ったり。氏の作としては個人的にアタリだった「
ポストコロナのSF」に収録の短編「オンライン福男」もこの路線に入れてしまおう。
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長女を連れて
神保町ブックフェスと
神田古本まつりに出かける午後。ドイツ語教本を格安で、さらに創元社ワゴンで上下巻モノの北欧ミステリ、ブックカバーのワゴンで気に入ったカバーをお買い上げで彼女にも得物があったようで何より。人の多さに疲れたみたい。私はといえば、創元社ワゴンでクラリさんとブックカバー、古本まつりは
盛林堂で荒巻義雄と石原藤夫の美本をそれぞれ数冊(徳間文庫版がまとまって出てた)、
羊頭書房(日下三蔵、北原尚彦氏がなにやら探しものをしていた)で野阿梓「銀河赤道祭」を入手。狛江に戻って晩飯テイクアウト調理の間に駅ビル本屋で、収まらぬ購書熱に任せてさらに3冊買ってしまう。明日も神保町まで足を運んでしまいそう。
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Prime
Videoで「ファイト・クラブ」(字幕版)を観る。
原作にほぼ忠実な映画化だけどオチはロマンチック。ディテールに色々詰め込んであるので、ストーリーをなぞるだけではコダワリが解らないと思う(タイラーが使ってるライターとかね)。このテンポと長さによくあの原作を収めたなあ。映画版だとクローネンバーグの「クラッシュ」が対照に思い浮かぶ(原作では特にバラードを思い浮かべることはなかった)。ブラッド・ピット怪演。腕が長いよね。ミート・ローフをキャスティングした人は天才だと思う。マーラ役はウィノナ・ライダーのイメージだよね
。実際制作側からはそういう話があったようですね。
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ひとえに中国企業と言ってもいろいろだなあ...と思い知った今週後半。他社との付き合いになれた国際感覚あるところもあれば、何考えてるかすぐにわからなくなる異星人みたいな会社もある。後者の君、金曜日の夜のメール発信で来週は一寸は落ち着いて話を前に進められるのか?
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「サバイバー」チャック・パラニューク(池田真紀子
訳)
今年出た改訳新版。パラニューク2冊目。集団自殺して消滅した米国のアーミッシュ的なキリスト教系カルト教団の元信者である主人公が、旅客機をハイジャックし、乗客乗員を降機させたのち自動操縦で墜落するまで飛び続ける...その操縦席で独りブラックボックスに遺すボイスレコーディングを通してココに至った経緯を語り続ける。1999年初出なのに今読んでも違和感ないどころか、元首相の射殺事件から切欠となった政権与党とカルト教団の癒着が日々ニュースを賑わせる今日の日本で読むとまた芳しい。貧富の両極化が進む資本主義の終焉を偏執的な蘊蓄描写で浮かび上がらせる修辞の妙、9.11後の今日までの世界を予言していたかのよう。旅客機絡みということでは「
異常」とも通じる雰囲気もある。「
ファイトクラブ」と構造的にも世界観も同じに思えるので、パラニュークの抽斗を知るにはもう1冊読んでみたい...けど文庫化されてるのが他にあるんだっけか?
[
【作家ガイド】逸脱的ロマンチストの肖像──チャック・パラニュークの現在地
]
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最近買ったアルバム。いずれも
bandcampでFLAC購入。#1は、Gary
Lucasが入ってるので知ったスペインにあるペットシェルターのチャリティーコンピ第3弾。フォークな感じで始まり80年代風ダークサイケからノイズ系トランス、実験音楽的ミニマルというジャケット画から想像できない展開の36曲。面白過ぎる。GL以外は名前も知らない音楽家ばかりですが、スペインの人たち中心のようです。J&MCの2014年"Pshycocandy"全曲演奏ライヴ@グラスゴー(#2)もよかった。当時のダークサイケや後のシューゲイザーとは違う独特の轟音ギターノイズ。リアルタイムで聴いてたので、脳にこびりついている音。IAレーベルからのJeremiah
Chiu & Marta Sofia
Honerのコンサート録音はとにかく素晴らしい。フィールドレコーディング音源と電子音楽・古典楽器の即興演奏。空気の温度湿度まで感じられる音景。
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盛岡へ日帰り出張。新幹線の予約チケット受け取り機みたいなのってないんですかねー。窓口で紙チケット受け取りの列に並んでる間に予定の便がでてしまって指定券買いなおす羽目に。用事は40分程で滞りなく終わり、真っ直ぐ帰宅。休みとって来たいなー。岩手山、登ってみたい。
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「Shot
From All Sides/ Magazine 1978/79」Laurie Evans
パンク・ニューウェーブ系バンドの少写真集を出しているイギリスの独立系出版社
Hanging
Around Booksのマガジン写真集。エジンバラでのライヴの様子とオフショット。ジョン・ドイルがドラムスの第二期メンバー。バリー・アダムソン多めなのは撮影者の趣味?全編モノクロだけど、どれも好い写真ですねー。リサイクル紙にデジタル印刷なので、クオリティが高いとはいえないが、まあマガジンファンとしては満足。ディヴォートの着てるのと似たジャケットを持ってるので、ちょっと嬉しくなったり。ちなみに自分入手は2刷目250部の撮影者署名入りってやつです。
09
懸案だった父のdocomo契約名義変更(私→父)のため8日土曜日朝に実家へ飛ぶ。空港で叔父から車(免許返納時に父が譲った)を借り、施設でピックアップして
予約していたdocomo
ショップへ。スマホの所有者変更→名義変更→引き落とし口座の変更の順。実家へ立ち寄り施設に戻る15時半過ぎ。朝から何も食べてないので、実家に戻って近所のラーメン屋を探して行く。
美味い店発見。ゴジラーメン、うまし。食べたら動く気にならず、そのままダラダラと過ごしてしまう。今朝は朝からしとしとと雨降り。今回は実家においてある蔵書などの整理箱替えが目的だったんだけど、冷蔵庫と台所の片付けを始めたら終わらなくなった。大量の生ゴミとガラス瓶。冷蔵庫の中はほぼ空になり、食卓の上も片付いた。居間の紙屑も破棄。夕方早めに来た叔母叔父夫婦から鹿児島のお墓のことなど引き継いで、車を返却、空港まで送ってもらう。2時間強、空港で時間つぶし(珈琲の美味しいところがあると嬉しいんだけど)、定刻発定刻羽田着、帰宅は22時前。
07
土砂降りの中、和泉多摩川と狛江の物件を内見。うーん。今回は見送りですねー。いいとこあったら引っ越したいけど、まあ急いでるわけではないので。しかし寒いなー。
05
津原泰水氏の訃報。10月2日に亡くなったとのこと。闘病中だったとか。数冊しか読んでないけど、いずれも記憶に残る傑作だったし、近藤ようこが漫画化した
「五色の舟」は、オールタイム・ベストな名作ホラー短編。58歳。若すぎる。
02
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「ゴジラ
S.P」円城塔
昨年放映されたTVアニメシリーズの小説版。シリーズ構成・脚本を担当した円城塔による、ノベライズ...というよりこれは劇中人物(?)視点での再構成版。アニメ版を観てるのが前提で、結局何が起こっていたのかはこれでようやく理解可能(特に最終決戦あたり)。特異点による特異点についての物語として視ることが出来て、S.P(シンギュラポイント)ってそいういう意味だったのね...って納得。聖典である1954年版オリジナル「ゴジラ」を特異点とした宇宙観と言うこともできて(その中にはシン・ゴジラも含まれている)、ゴジラ・オマージュを超えている。難解そうでいて(映像で既に可視化されてるからというのは勿論あるが)リーダビリティは高く、小説としてのエピローグも美しい。
ところで、
OSTも映像ソフトと同時に購入しているんですが、BiSHの主題歌とポルカドットスティングレイのEDテーマ未収録なのはなんとかならんかったのか。入れない?フツー。
今のマンション、そろそろ2年になるので、引っ越しを考えてる。今日は不動産屋に行って物件検討。候補が数件。
01
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「東京ヒゴロ(2)」松本大洋
続刊が出るのを待ってる唯一の現在進行新作漫画。
ここまで読んで新しい松本大洋が出てきてる感じはしていない。なにかインスピレーションや内省のきっかけになるようなこともなく、戯画化された漫画家像の葛藤に心動かされることもなく、ただ多分作者の手を離れつつある人間模様がどうなっていくのかは見届けたい。とどのつまり自分は創作の人ではないので、共感はできても客観視しか出来ないので(いまのところは)。ひとつ苦言は、劇中に出てくる漫画家の絵に興醒めするところがあって、そこは想像に任せて欲しいな...。
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