This is POP!! | ©gaburu
Next Month04 '21
30
「機巧のイヴ」乾緑郎
架空の疑似江戸時代を舞台にしたスチームパンクの連作集。繋がる5つの短編を収録。NOVA夏号で番外編が収録されてたので興味湧いてすぐポチったもの。3巻もの。"機巧"とはアンドロイド(最近は"オートマタ"と言うのね)設計技術のことを指すらしい。設定を活かした人情噺から始まるんだけど、話を追うごとに、機巧の謎から天皇家(作中は"天帝"と呼ばれる)まで巻き込む陰謀へと大きく動いていく。架空とはいえ、遊郭や湯屋に遊興など、時代物として風俗の描写が見事で、SFではないディテールにすっと惹き込まれる。NOVA所収はかなり進んだ時代を描いているので、本作からどうやって繋がっていくのか、次巻が楽しみ。
29
「ポストコロナのSF」日本SF作家クラブ編
現会長の池澤春菜のまえがきから収録順に小川哲、伊野隆之、高山羽根子、柴田勝家、若木未生、柞刈湯葉、林譲治、菅浩江、津久井五月、立原透耶、飛浩隆、津原泰水、藤井太洋、長谷敏司、天沢時生、吉上亮、小川一水、樋口恭介、北野勇作、鬼嶋清美。タイトル通り...というかウイズ・コロナ・アフター・コロナ・ポストコロナを題材にした競作短編集。作家それぞれいろんな視点で描いていて、当代の最前線それぞれの個性を計るうえでも面白い。意外な面を見た柞刈湯葉「献身者たち」、コロナとは最早関係なく独特の神話的な一篇を上梓する津原泰水「カタル、ハナル、キユ」、直接的な感染症ネタに古典的SFアイデアを合わせ流石な小川一水「受け継ぐちから」、個人的に一番感心したのは日本SF作家会議との繋がりが見事な樋口恭介の「愛の夢」。ステープルドン的な本気の傑作。柴田勝家の「オンライン福男」も意外で...というか名前からすればこの路線のほうが似合ってるよね。

今日からゴールデンウィークだけど、新型変異株による第三波で、現在大阪は医療崩壊の最中。東京も今日は再び新規陽性者が千人を越えました。というわけで、1年経ったけれど、状況変わらず。ワクチン接種が本格的に始まるのは数カ月先かな。変異株の出てくる速度に追いつけるか。このまま数年、波の繰り返しな気もしてくる昨今。欧米ではワクチン接種が進行中な一方、インドでは完全な医療崩壊で、一日の新規陽性者が40万人に届く勢い。医療用酸素も枯渇し、為すすべなしという状況。世界規模のパンデミックが想像の上を行く現象になりつつある予感。
25
「世界SF作家会議」早川書房編集部 編
フジテレビの深夜にやってたSF作家ウェブミーティングの書籍化。2020年7月26日が一回目、二回目が21年1月6日、三回目が2月23日。初回は観てないので、今回テキストで読んだのが初見。1回めからこうして並べて読んでみると、流れがちゃんとある気がする。大森望がうまく方向性をコントロールしてたってことなのかもだけど、冲方丁のまとめは流石だし、三回目の陳楸帆もいい感じで絡んでて(放送では一部しか使ってない?)この辺が読み物としてうまくボリューム感を出してる秘訣か。放送の際はトリックスターにみえた樋口恭介氏も本書では巧く繋ぎとして機能してるし。SFモノの軒談の愉しさが好く出てるし、所々に金言も散りばめられてて(ケン・リュウ、劉慈欣の飛び道具使いも効いている)、「ポストコロナのSF」の合間に面白く読めた。
18
「NOVA 2021年夏号」大森望 責任編集
高山羽根子、池澤春菜、柞刈湯葉、新井素子、乾緑郎、高岡哲次、坂永雄一、野崎まど、斧田小夜、酉島伝法(収録順)。まず冒頭のポストコロナSF、高山羽根子「五輪丼」が素晴らしい。僅か20頁弱でアフターパンデミック/オリンピックの虚無を完璧に描いている。twitterでも絶賛の呟きを頻繁に見る「無脊椎動物の想像力と創造性について」坂永雄一も出色。"ヒトは何処から..."が既に問にあらずな新たなパラダイム...ヒトはもう世界の中心ではなく物理現象の一部に過ぎないという感覚。このあたりが今の自分には心地好い。柞刈湯葉「ルナティック・オン・ザ・ヒル」もその線上にあって、円城塔の雰囲気も。斧田小夜「おまえの知らなかった頃」は中国を舞台にしたDXもので、「荒潮」を思い出した。新しい名前がどんどんビジョンを更新していくところが凄いなあ...というかSF的想像力の時代なんだろうなあ。
11
帰ってきたJunghans Chronoscopeのベルト交換に新宿高島屋。近い色質感のものがあった。金具はそのままで交換15分。
10
「星系出雲の兵站 -遠征(5)」林譲治
前巻最後の衝撃は冷静に処理され、星系敷島の異星文明とその謎は星系出雲の人類史7千年の闇を暴く。星系壱岐で衝突する人類と敵は、前巻のイベントを受けて新たな局面に入り、複雑系の勢力争いに。畳めるのかコレと思った話の広がりが、するすると回収に向かう。最後は名探偵と犯人の対峙で、全9巻に及ぶ伏線が見事に解かれる秀逸なミステリ小説。大団円といっていいのでは。終わってみれば"兵站"は結局舞台装置のひとつであって主題ではなかったような気がするけど、そっちはそっちで自分でゆっくり解いてみるのが楽しみ方だと思います。力作だし、傑作...今年の星雲賞受賞も宜なるかな

修理を頼んだ時計、3本のうち2本が帰ってきたと連絡あったのが1週間前。ってことで長女と一緒に新宿まで出かける。NOMOSのOrionとJunghans。前者は保証が効いて無償、後者はオーバーホール10万円と言われて引き戻したもの...のつもりだったんだけど故障は治してくれていた(感謝)。2千2百円也。ちょっと得した気分なので、傷んでるベルトを新調しようかと思っている。
04
「星系出雲の兵站 -遠征(4)」林譲治
 前巻に引き続き、敵の正体、出自の探索が各星系で進捗する。星系敷島で異性種族が確認されている惑星2つ生態系と進化の話、そこで太古に何が起こったかの推測...の一方で、敵との交渉が新局面を迎える、ってのが中心。全体的には粛々とした展開。の最後に、度肝を抜く転回。次巻完結を前に、見事な一発。でも広げた風呂敷は畳めるの?いや畳まなくてもいい気もしてます。ストーリーよりも思いつくだけの背景情報を面で投下してるのが、本シリーズの面白さな気がしてきた。

あつまれどうぶつの森はイースターイベント。そつなくクリア。ゲームの中で花見をする。
03
「星系出雲の兵站 -遠征(3)」林譲治
 星系敷島でのファーストコンタクト、星系壱岐での敵との戦闘、そして星系出雲で発見された播種船(地球から数千年前に人類が星系出雲に渡ってきた船)の一部...と、イベントが広がる。兵站というか政治経済権謀術数話はスパイス程度、メインの話は異星人の正体と星系出雲文明の起源。行ったり来たりだった話の焦点が見えてきたかな。とはいえ、ドンパチや派手な事件は起こらず、現場の工夫と会議室で話は進む。情報量が多いので、マニアックに深堀りした同人誌とか出てくるのかな。兵装系のネタ多めなのは、架空戦記オタクではないので、もう殆どついていけてませんが。意識受動仮説をネタにしていて、神林長平とも繋がってくる方向性は興味深い。前巻の感想で書いた人類軍の艦船種別一覧、表紙画絵師のRei・Hori氏がつぶやいているのを見つけた

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