This is POP!! | ©gaburu
'01.08
29
Is This It/ The Strokes
(Rough Trade, 2001 )

初期パンクの感触。ストロークスのデビューアルバム。エフェクトかけたザラついた、それでいてエモーショナルに爆発する瞬間も見せるボーカル。主張の強いベースの音に、バタバタとしたドラム、コードを鋭利に刻むギター。NYパンク、ガレージ・ロックの粗く疾走する感じは80年代90年代を越えて(つうか通過して)普遍的な"ロック"のカッコ良さと言える。傑作「George Best」の頃のウェディング・プレゼンツを髣髴とさせる瞬間も。全11曲、個人的には日和なしの捨て曲無し。1stならではの魔法なのかもしれんが(99年結成だっつうから)、全てに痺れる1枚。
27
electric sufi/ Dhafer Youssef
(Enja Records, 2001)

"Electric Sufi"(電化されたイスラム神秘主義)のタイトルだけで唸ったヒトは即買いでしょう。ウード奏者ダフェル・ユッセフ(とカタカナ表記?間違ってたら教えてくれ)の、ドイツ/NY他先鋭ジャズ・ロック音楽家競作。シュトックハウゼン(tp奏者のね、カンの師匠の実験音楽家でなく)にダグ・ウィンビッシュ(oN-U)、ウィル・カルホウン(ex。Living Colour つか、この二人は"Stain"の時のLCのリズム隊だ)の名前も見える。タイトルや面子から、70年代マイルス的な中東旋律音楽とか、ロック的なリズムを想像するけど、骨はユッセフのウード(中東琵琶)とボーカルを中心にした正統派なフォーク音楽。無論先鋭的なベース+ドラムのコンビネーションもあれば、微ノイズ/サンプリングを隠し味に使った楽曲、ECM的なtp音色が絡むリリカルな曲もあるけども、むしろそれらはバッキングとして機能してる感じ。錚々たる面子の割に、"歌"(ボーカルという意味ではなくね)が聴後に残るバランスが凄くイイ。
24
CACHAITO/ Orland Cachaito Lopez
(World Circuit Production, 2001)

ブエナビスタ・ソシアル・クラブでベース弾きしてた(らしい/映画観てないので)、オーランド"カチャイト(?)"ロペス爺のソロ・アルバム。 ホーン、ストリングス入れれば総勢40名近い音楽家が集まって作る、アフロ・キューバン。偏に秀逸なミックスの技で、出来の良いキューバン・オルケストル以上のアルバムに仕上がってると言えるのでは。勿論、ロペズ爺始め音楽家たちの熟達したグルーヴがあってのことなのだけども、ぐいぐい/ブリブリと鳴るアコースティック・ベースと、硬く弾けるコンガを前面に持ってきて、ナチュラル・エコーかそれを模した弦管の音場にクッキリ主張させる恣意的な音造りで(この辺、チャド・ブレイクなんかにも通じる感じ)、この切れ味はなかなか斬新。
構成も秀逸。出だし数曲まったりなキューバ音楽で唸らせ、やにわにスクラッチ入れたかと思えば、エコーかけたトランペットや歪んだギター、ハモンドも加わってアシッドなグルーヴに変わっていくあたりもスリリング。"またぞろ、キューバ音楽?"と思ったヒトに、是非。チャールズ・ミンガスをリスペクトした#6なぞ野卑でカッコ良いよ。
23
Traffic Continues/ Fred Frith & Ensemble Modern
(W&W, 2000)

フランク・ザッパ最期のアルバム"Yellow Shark"で知られる(?)、ドイツの室内楽団"アンサンブル・モデルン"に、カンタベリー出自の前衛ギタリスト、フレッド・フリスとの競作。早世の前衛チェリストにして盟友、トム・コラに捧げられている。
現代音楽風の(つーか、現代音楽だ。)静動、陰陽のシンコペーションにノイズが絡む管弦アンサンブル。無調で難解な音隗じゃなくて、屈託無いユーモアもそこ此処に顔出す。その辺は、この楽団自身の持ち味かも。小断片から成る2曲収録だが、各片の色も形も様々で、ドライブや仕事の最中に流してると、無意識に滑り込んでくる感じが、ある種のアンビエント音楽ともいえる心地良さも感じさせてくれたり。
ハードカバー風の美麗な紙装丁ジャケットの手触りも心地良い表現主義絵画のような"作品"。ヒトに依り時に因りいろんな心象を受けるのでは。
16
The Live Mix Part2/ BREAKESTRA
(Rapster Records, 2001)

"Keep Funk Alive"を座右の銘に、ファンク、ソウル、レアグルーヴ、ファンキージャズの名曲数々を人力で皿回す、DJビッグバンド。
ノッケからネタ9曲をメドレーで流すJB's風オープニングで軽く煽って、まずは御大"Funky Drumer"から。スタンリー・タレンタインの鯔背なメロディー でいなたく繋げば...スライのカバー("Sing A Simple Song")なんて出だしのテンションもそのまんま。「おおっ..これも?あれも??」 てな具合で、ノンストップで1時間強、廻す舞わす。"繋ぎ"はあの曲のベースラインにあのバンドのギターカッティング..あっ、このフレーズをアコースティック・ベースで演るなんて..うわ、この歌い出し、掛け声までソックリ!...てな感じで、ネタ知ってれば知ってるだけ悶絶する1枚。いや、知らなくても、濃いファンク・グルーヴと、皆がネタに使ってるあのフレーズ、 このフレーズが所狭しと飛び出すんで、「これ何だったっけえ??」とつい引き込まれるコト必至。チャック・ブラウン・アンド・ソウルサーチャーズとか、古(?)のゴーゴーとか。もっとタイトで速めのグルーヴ。何か血肉動かしたい時、バンド芸を堪能したい時に。
13
Looking For Saint Tropez/ TELEX
(J'M, 1993 | originally released in 1978 )

テクノ元年1978年リリースのベルギー発テクノポップ・ユニットの記念すべき1st。EP曲も収録のCD盤。ヒット曲「モスコウ・ディスコウ」に、秀逸な「Rock Around The Clock」のテクノ・バージョンを含む。
ムーグ/シーケンサー/エフェクト効いた仏語ボーカルのシンプルな組み合わせの、モンドで浪漫な欧州音楽。これこそ王道で究極な"テクノポップ"。YMOの1stをもっと洗練したシンプルさ。とでも言うか..このピコピコ感は、Daft Punkの傑作1stに通じている...と思うんだけど。
煌びやかなポップス聴いて疲れたら、これでリハビリ。スカスカでピコピコ。基本の1枚。
10
Early Plague Years/ Thinking Plague
(Cuneiform Records, 2000)

"耽美派ネオサイケ" x "クリムゾン風プログレ"とでも。80年代英国NWのバンドだと思ってたら、米国のバンドらしい。このCDは1984年、1986年にカセットリリース(ともに2年後にLP化)された、1st、2ndアルバムのカップリングCD化。
漆黒または濃青色の女性ボーカルをフィーチャーした演奏は、手数多い変拍子に金属的なベース、鋭利なノイズ刻むギター、と、あたかも「Starless and Bible Black」の頃のキング・クリムゾン。特に1stの後半(#6-12)は、影響濃く混沌。CD前半の2ndアルバムの方が、ネオサイケ調(サッドラバーズ系か)で、呪術的なリズムが変拍子ハジケル展開で80年代風。血が騒ぐ。夏向きではないが、冬の初めくらいに聴くとハマリそう。変拍子マニア、ネオサイケ者は覚えておくと良いかも。
06
ほぼ1ヶ月前の海外10冊に続いて、今回は、日本もの10冊。とは言え、大原まり子も山田正紀も碌に読んでないワタクシメ。大上段に日本SFを斬るなんて真似は到底できませぬゆえ、他にも面白いものが沢山あるとご承知置きの上、ご笑覧下さい。つーか他に、面白いのあったら、教えて下さい。帰国の楽しみにメモさせて頂きますので。

幻詩狩り」川又千秋
"時"を"言葉"で作り出す方法を見つけた..とアンドレ・ブルトンに連絡したまま疾走した詩人。 シュールレアリスト達の謎の連続死。そして、またP。K。ディックの死。舞台は東京。シュールレアリズム関係の未発表資料が詰まったと言う謎のトランク。そして、主人公は発見する...これこそ、究極のSF。

失われた都市の記憶」光瀬龍
光瀬龍の一連のSF小説(「百億の昼と千億の夜」とか)の無常観というのは、かなり強烈に影響を受けた手前、これは外せぬ一冊。全編に渡る、この寂寞とした空気感。唯一無二。谷甲州の世界に継承されてる部分もあるか。バイブル。

消滅の光輪」眉村卓
母恒星が新星化する惑星系に赴任した司政官。彼が、住民の退避計画を遂行する様を描く。舞台はSF的だが、その実、官僚機構の中で大儀を成そうとする一官僚の奮闘が筋。荒唐無稽さは皆無で、そこが良い。ビジネス・ゲームRPGつう趣も。

モンゴルの残光」豊田有恒
もしも元が世界制覇を成し遂げていたら。そして、そのまま世が続いていたら。所謂「if」モノ。この手は、有りそうな嘘をどの位リアリティを持って構築できるか、がポイント。そういう意味でも傑作だし、ifモノと言えば、「もしもナチスが...」が海外モノの定番に対して、「モンゴルが..」ってな設定と、それが醸す空気感が堪らん。

産霊山秘録」半村良
奇想天外な展開は類を見ない伝記SF。日本史の暗黒部分に跋扈した"ヒ"一族という謎の氏族を描いた、絵巻物。歴史上の人物、事件を再構築してみせる、こういう実史の裏解釈モノって、堪らなく好き。諸星大二郎的おどろしさとは、また違う読感。

戦闘妖精雪風」神林長平
多作な神林氏。これが、初期の傑作であることは異論挟む余地ないでしょう。戦闘用AI(戦闘機)に乗り、未知の敵JAMと戦闘を繰り返す男の話。ヒトと機械、知性とは、な、PKディック的なテーマを淡々とした筆致で突き付ける。個人的には、続編の種明かしはそう面白くも無かった、残念ながら。

梅田地下オデッセイ」堀晃
絶版久しく、また復刊予定なしという、今となっては幻の1冊。版元のハヤカワに対する堀氏の裁判闘争の挙句、廃刊となったモノ。突然大阪の梅田地下街が封鎖、閉じ込められた世界を描く表題作含む傑作短編集。古本屋で万が一見たら即買え。

虚航船団」筒井康隆
他にも面白い小説は沢山あるし、この1冊はむしろ駄作だと言う方も多々いるだろうとは百も承知で。しかし、冒頭の「まず、ホッチキスが登場する。彼は気が狂っていた。」の一文で個人的には軍配。たしかに、最後まで読むのに骨折れることこの上なしだが...。因みに学生時代の自分のあだ名は"日付スタンプ"(笑)。

果てしなき流れの果てに」小松左京
自分の読書暦の中で、氏の最高傑作はこれ。歴史の改竄を緒端にした、時間モノ。初出が1965年で、描写に時代は感じさせるものの、スケールと大河ドラマな展開、読後に残る満足感は、御大の脂ののりきった筆致堪能できること請け合い。角川版の生頼義範カバーも今は懐かシ。
05
Clicks & Cuts 2/ V.A.
(Mille Plateaux, 2001 )

フランクフルトを拠点とするミニマル アンビエント テクノ・レーベル、ミルプラトーの編集盤。CD3枚組み。で、CD1枚の値段という...ミルここんとこ紹介してた"~scape"レーベルとも関係あるのか、前回の盤にも、このコンピレーションと同じ名前が若干。
とにかく、sndで始まるdisc1が秀逸。無機的で柔らかい音。シンセなどのメロディーは殆ど皆無で、パルスと微ノイズ、その隙間が織り成す旋律。音数の少なさとミニマルさ加減、単調でなく揺らぎの入れ方が絶妙。飽きない。というか、重さの無い音。浮力があるのではなく、そもそも、質量が無いというか。
disc3のシンプルで柔らかいなハウス・ビートと、微ノイズ音響が曲によって入れ替わる編集もまた良し。間のdisc2はビートが明瞭なテクノ・チューン中心の選曲で、個人的にはそれ程でも...この2枚で良かったんじゃないの、と言う気がする。まあ、どれも十分に水準以上ではあるが。まあ、価格CD1枚分ですから、文句言う筋はありません...。しかし、disc1は、ほんと良い。良過ぎ。最近こればっかりですまぬ。
03
komfor. labor/ ~scape presents mixed by Stefan Betke
(WMF Records, 2001)

ミニマル。アンビエント。で続けてもう1枚。前回のJan Jelinekと同じベルリンのテクノ・レーベル~scapeから。編集盤。まあ、DJものですか。
サンプリング・ノイズをループさせた無機音(ぷつ..プツ..とか、フロント・ワイパーの緩慢な音とか)を微そかに刷り込みながら、呼吸と同じくらいのBPMで進む時間。前回の奴がタイトルに"jazz"を冠してるくせに"所謂ジャズ"風が微塵も無かったのに対して、こっちはコンピレーションだけに、Jazzland風のピアノのループや、4ビート・ドラム、さらには中東風旋律入りから、弦重奏まで、音ネタ多彩(こっちの方が"loop finding jazz"て感じ)。でも、肌触り、温度感覚は同じ。気持ち良過ぎ。
この編集リミックス盤、カラーが明確。良いレーベル。最近はこの辺ばっかり聴いてる。

2006年2月