This is POP!! | ©gaburu
'01.07
31
loop-finding-jazz-records/ Jan Jelinek
(~scape, 2001)

ミニマル。アンビエント。寝息並みの緩慢なBPMで深めのビート。プツプツとしたノイズや粒子音。たまにシンセ。音数の少なさと隙間のタメと。気持ち良過ぎ。音の"硬度"とか、音/無音の境界の滲み具合というか彩度というか.。書いてる自分でも意味不明の"感じ"は、説明不能(波形で可視化すると簡単?)... ツボです 。
夏涼しく、冬微温な音というか(もっと判らん...)
30
Talk Normal/ Laurie Anderson
(Rhino, 2000)

80年代初めのYMOバブルとでもいうか、ポップでモダンな(当時)パフォーマンスアートが持て囃された時期、の代表のヒトリとして記憶してた、ローリー・アンダーソン。殆ど1stLPかラジオでしか聴いたこと無いヒトだったのに...「ライノからの編集盤だしCD2枚に巧く纏めててお手軽に違いない...」と軽い気持ちで買って聴いたら、驚き。こんなにカッコ良かったの!!てなもんで、何とも"所詮パフォーマンス芸"の先入観ぶっ飛び。
アンダーソンの流れるようなテキスト朗読にエスニック・リズム、客演音楽家のギター、シンセ等々のインストルメンタル。基本的にはこのパターン。で、アルバム毎に客演が変わり、見かけのサウンド・コンセプトが変わるんで、こうして編集盤で聴くと、こうも色々やってたの?てな具合で驚きながらも面白過ぎ。ピーター・ガブリエルが全面参加した2nd(ナイル・ロージャース、ビル・ラズウエル、エイドリアン・ブリューも)、ブライアン・イーノがプロデュースしてて、ルー・リードとの共作共演も含む6thアルバム。ラテン音楽を大きく取り入れた5thは、ピーター・シェラー&アート・リンゼイ(って、アンヴィシャス・ラバーズね)のプロデュース曲を含む。80年代のアルバムには、デイヴィッド・ヴァン・ティーゲムが全面的にリズム作りしてるところも見逃せません。
何より、アンダーソンの朗読テクニックの気持ち良さに(凡百のボーカリスト以上に音楽的)参ってしまうのですけどね。
27
木星クラブ/ くじら
(biosphere Records, 1998)

ドイツの夏に聴く"くじら"は、夏の陽射しと木陰とじとっとかく汗と蝉の声と..。記憶の中の日本と郷愁を誘ったり、で帰国先に控えた今の気分にはまるのです。
微かに中性的にセクシャルな触感がある、カタカナ/ひらがなの語感。アコースティックでまったりとしたグルーヴと混ざり合った、杉山さん独特の桃源音楽。実は、1曲目のロックギターだけは、カタカナ語の発音が駄目なんだけど("ミューズィック"という語感はねえ...)、2曲目以降は終曲の最後の最後まで、ゆるりとした空気と風景が堪りません。日本の湿度で聴くとどうなんだろう。
いつの間にメジャーからドロップアウトして自主制作になった(おまけに、今は杉林さんのソロなのですね..)のかも知らぬ、不届き愛聴者ですが、日本に帰ったら是非ともライブ観たいもの。"3人くじら"が良いな、できれば。
22
Recordings/ Porcupine Tree
(Snapper Music, 2001)

以前紹介した"bass communion"のスティーブ・ウィルソンを中心に、元ジャパンのリチャード・バルビエリなども擁する、英国の耽美派ロックバンド、ポーキュパイン・トゥリーの最新音盤。未発表曲、廃盤シングル音源を集めた編集盤で、限定20,000プレス。
このバンド、卓越したテクニックにルックスも端正な4人編成。1991年デビュー以来既発7枚のアルバム出てるらしいんですが、自分が聴いたことあるのは前々作のスタジオ・アルバム"Stupid Dream"。これは、英国ロックとラッシュ(カナダのトリオ・バンドの方ね)なんかのポップなプログレが邂逅したような佳作で、良いんだけども、絶賛するほどのことは無かったんですが..。前作"Lightbulb Sun"の音源を比較的多く含むこの編集盤で、かなり印象を修正。
キャラバンなどにも通じる叙情的なメロディーと、音数絞った(でも贅沢な)絶妙のアレンジ、アコースティックでアンビエントな音の感触。美意識に厳格な音楽化集団ならではのじっくりと作りこまれた作品群。まあ、やっぱりもろにラッシュみたいな曲もあるけど(#8)、これは誉め言葉と言うことで。
90年代英国ロックってこういう流れもあったのか...と、断絶時代を後悔の1枚。プログレって範疇だったんだね、きっと。勿体無い。とにかくジャケットも秀逸な前作を聴かねば。
19
Live at la Olympia/ Jeff Buckley
(Columbia, 2001)

ジェフ・バックリーのパリはオリンピア劇場でのライブ録音。公式盤としては、ライブ音源ベスト盤の「Mystery White Boy」に継いで2枚目ということになるんですかね。1995年の同ツアーからの音源で、その既発盤にはこのライブから「Last Goodbye」が収録されてました。
MC含めて切れることなく収録された(つーか切れ目なく編集された?)パフォーマンスは、ライブの臨場感に溢れてるし、舞い上がるようなハイトーンヴォイスとギターサウンドの音圧の相乗効果は、鳥肌もの。物真似なども繰り出す芸の広さも思わずニヤリ。いやはや、MCの声まで艶っぽい。放射してるオーラはジム・モリソンにも繋がるか..と思ったり。
こういうのを聴いてしまうと、他の音盤聴けなくなってしまう。聴けなくなっても良いんで、海賊盤じゃなくて正規盤で録音物どんどん出して下さい。
12
Outbound/ Béla Fleck and The Flecktones
(Columbia, 2000)

米国ブルーグラス界の若旦那、超絶技巧バンジョー弾きベラ・フレック師匠のフュージョン・カントリーバンド"フレックトーンズ"の昨年秋出た最新作。
西欧/東欧/中近東/アジア/北米/南米/アフリカ上下、とにかくネタ満載、次から次に飛び出すスタイルは、並べて書き出してみると無茶苦茶だけど、バンジョーの呑気な音色とフレージングに、バカテクなエレクトリック・ベース、流麗なサックスで演ってしまうと、ポップでさらりと聴けてしまうのはこのバンドならではの魔法でしょう。(チベタン詠唱→ファンク→和風旋律→カントリー&ウェスタン→デキシーランド・ジャズ..なんて流れが1曲の中にさらりと入ってたり) ゲストも多彩で、ジョン・メデスキ、エイドリアン・ブリュー、ジョン・アンダーソンなんて名前も。濃い面子に濃いアレンジながら、飄々としてる音楽。小難しく"スタイルの剽窃"を糾弾するクチにはご遠慮願って、"愉しけりゃ何でもありよ"な面白がりにお薦め。
初期の傑作「ユーフォー豆腐(UFO TOFU: 逆から読んでも..)」も是非どうぞ。これは前作から加入のサックスじゃなく、ハーモニカ奏者のハワード・レヴィ氏が在籍してた時期のアルバム。
10
twist/ Carlos Bica & Azul
(enja, 1999)

前回に続き、フランク・メビウス絡みで1枚。
ポルトガルのウッドベース奏者、カルロス・ビカのリーダー作。基本的にはベース、ギター(メビウス)、それに打楽器奏者のジム・ブラックのトリオ。で、2曲にゲストとしてボーカルの女性、アナ・ブランダーオが入る構成。弦弾き、指弾きでニュアンス変えるベースは良い味出す脇役で、メビウスのフリッセル風・たまにスコフィールド風なギターが主役。対して、ドラムにパーカッション他打楽器類で作り出す音像が、裏の主役か。ファドっぽい少しメランコリックでアンニュイなメロディーと、柔らかくて透明な全体の音色は、暑い日中に木漏れ日の下で微風にさらされてるかのよう。ウトウトしたくもなってくる。
ビカ氏、つい最近アナ・ブランダーオとアルバム出してます。これも要チェック。(メビウス、ブラックの参加は無し)
06
Love Me Tender/ Frank Mobius: Der Rote Bereich
(ACT Music, 2001)

ドイツで活躍するジャズギタリスト、フランク・メビウスを含むトリオの2枚目のアルバム*。メビウスは、昨年一番の気に入りアルバムだった"woof"というアルバム以来注目してたヒト。ビル・フリッセルの影響濃いスタイルながら、フリッセルのアメリカ音楽(風景)への傾倒/憧憬が無く、よりジャズ的ロック的なスタンスが、本家フリッセルより好みだったり。これに、軽妙に細かいフレーズを紡ぐドラムと、エリック・ドルフィーの影響濃い独特のフレーズ廻しのバスクラリネット、の小編成。シンプルな構成だけど、音色は豊か。15曲だが飽きることなく愉しめる。
タイトなビートを刻む上にソロをとるギター/管楽器というフォームとは違う、3者が絡み合いながら場を形成するアンサンブルの妙。丁々発止の掛け合いで一気に上り詰めることも無く、淡々と会話を重ねながら、でも少しずつ場の温度が上がっていくような。タイトル通り、プレスリー・ナンバーをカバー1曲。メロディーだけ残して全く自己流にアレンジ。このセンス、ジャズ好きだけが聴くのは勿体無い。
 
* 今の面子で2枚目。前任ドラムスJim Blackで更に2枚出ているらしい。(M.I.Z.さん@ "Jazz Pages in Green"から御指摘 感謝)
04
Minneapolis/ Michel Portal

フランス前衛ジャズの大御所、ミシェル・ポルタルの最新盤。なんと、黒人のリズム隊に、ヴァーノン・リードがギターで参加。だからと言って、ファンク+フリーなインプロビゼーション...なんてことにならず、渋過ぎるというのか鋭利過ぎると言うのか..タイト極まりない、でいてアイデア豊かで柔軟なドラム+ベースのコンビネーションと、ポルタル爺の作曲センスとモダンな演奏が完璧に調和してる、説明できないフュージョン音楽。トニー・ハイマスの鍵盤がまた凄く良い。ジャズから現代音楽まで..の含蓄と、硬く青い音色が。
ブラックロックのジャズへの導入と言えばマイルス・デイヴィス、それに続く系譜...が元気な昨今。これはデイヴィスの呪術的ともいえる融合が醸す、黒いウネリとはまた違う感触。斬新なアイデアを、演奏力で完璧に音楽化した画期的な1枚だと、個人的には目から鱗の傑作。良いよ、これは。
カバー1曲。ミンガスの「ポーク・パイ・ハット」。肉体と知性の結実。

2006年2月