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To Be Continued/ Terje Rypdal,
Vitous, DeJohnette (ECM, 1981)
↓の続編。個人的には蛇足な感も否めないこのアルバムですが、ジャケットが好きなのでたまに聴いてしまいます。
Rypdalのギターの音色は、前作よりも幅広く且つ抽象的(いかにもエレクトリックギター...という感じでなく)で、このアルバムの方が好きなんですが、
ヴィトゥスとディジョネットは前作の方が良いかなあ。エレクトリック・ベースの曲など、一寸スタンリー・クラークみたいだったりして、どうしても時代を感じてしまうし、ECMらしい曲は、いかにも..って感じで。緊張感に欠ける気が...。決して凡作ではないんですけど、前作が前作だけに。
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Terje Rypdal, Miroslav Vitous, Jack
DeJohnette (ECM, 1979)
邦題「未知への飛翔」。
70年代のECMには、歴史的なギタートリオの名盤がいくつかありますが(パット・メセニーのデビューアルバムだってそうだし)、これもそのうちの1枚ではないでしょうか。ノルウエーのエレクトリックギター弾き
リプダルに当代髄一のベース弾きとドラム達人。リプダルのアンビエントなギターより、ヴィトゥスの弓弾きベースが支配的で、
ディジョネットのクールに疾走するドラムとあわせて聴き所になってます。隠し味で結構効いてるのが ヴィトゥスのシンセサイザー。
ジャズらしい即興アンサンブルの面白さをじっくり聴いても良いし、(ECMファンは怒るかもしれないけど)欧州の
ウィンダムヒル的アンビエントとして聴き流すのも"あり"だと思う。
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Take A Look In The Mirror/ Korn (SME,
2003)
新譜です(リリースは昨年11月)。6枚目。特別仕様は映像収録DVD付き。前作をトバしてるので、相変わらず...とは云えないんですが、しかし、高性能ぶりは変わらず。期待通りの、ヘヴィ・リフをユニゾンで畳みかける攻撃的な音。このバンドに関しては、それで十分。言っちゃ悪いが、裏切らない安定感が有難い。(前作は作り込み路線だったらしいけど)
DVDには、過去のPVのカットアップなど収録。PV(怪優ウド・キアーが出てるアレ)観てファンになったワタシなんかにはとても嬉しかったり。ベース弾きのお兄さん("Fieldy")の立ち姿、好きなんだよねえ。他にも、
ジョナサン・デイヴィスのヴォイストレーニング映像とか。そういうこともするんだね...
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「3 Years」Morelenbaum2/ Sakamoto(DVD)
坂本龍一(piano)と
モレレンバウム夫妻(vocal, cello)のトリオが発表した、ジョビン曲演集「
Casa」に始まるスタジオおよびライブ盤の数々。その活動の軌跡をまとめたDVD。限定10,000枚。
放送向けのドキュメンタリー映像なんかじゃなくて、主に教授本人が録ったカム映像、写真で構成。「Casa」のリハーサル映像(ジョビン家に機材を持ち込んで
ジョビン自身のピアノで録音されてる)からツアー映像(演奏シーンは少しだけだが..)、ホームビデオを自家編集した感覚で、スケジュール帳を模しただけの素っ気無いインターフェイスも合わせ、かなり面白い作り。斬新と云っても良いかもしれない。
出来れば、雑誌記事(SWITCH 2002.12号とか...)などと合わせて鑑賞すると良いかも。文字的説明は何もないので。
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Back To The Front/
The Magic Band
(ATP Recordings, 2003)
昨年のベストアルバムに入れ忘れてました。ファンを標榜してるくせに全くもって情けない...。60年代後半から80年代初めまで、アヴァンギャルド・ロックの切り札的カルトバンドとして活躍、以後のアルタナ音楽シーンに多大な影響を与え続けている、Captain
Beefheart and Magic Bandの、悪徳バンマス抜き再結成。2003年の英米All Tomorrow's
Partiesに出演の為に、今も一線で活躍するジョン "Drumbo" フレンチ、
ゲイリー・ルーカスに加え、所謂Bat Chain
Pullerバンドのギター弾きダニー・ウォリー、さらに長い間行方不明だった「Trout Mask
Replica」に始まる黄金期を支えたベース弾き"Rocket Morton"ことマーク・ボストンの四人が
集まったという。そのATP出演(4月)に先立つ2月、リハーサルの模様を収録したのがこれ。ドランボ氏の極似ボーカルで、隊長不在もなんのその。Nuggets→Velvets→NYパンク→Pixies/Sonic
Youth...米国サイケデリック・ギターロックの系譜における裏ボス的な、有無言わせぬカッコ良さ。「鱒面」だけで語る無かれ。
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Forty Days And Forty Nights/ Seigen
Ono (Kitty, 1991)
高名な録音エンジニアというか音響職人、小野誠彦氏の、これはギターミュージックによるアンビエント(1998年に自らリマスタリングして再リリースしたもの)。
自ら弾く12弦ギターに加え、Sketch Showのツアーメンバーにも姿見せた"Dr.K"こと
徳武弘文氏のテレキャスター、
佐久間正英(ベースじゃなくてギターで参加)、
マーク・リボーなど1曲ずつの客演に、鍵盤では
モーガン・フィッシャーのピアノ、アコーデオンで小林靖宏。勿論、自らProfetを駆使したり、具象音を効果的に使ったり、音響職人の面目躍如。多分、高度なHiFiセットで音の良い空間で聴くと、その音空間の広がりに別世界に居るような感覚に浸れるんだろうなあ...とディスクマンにヘッドホンで想像逞しくしながら、それでも十分にイーノからペンギンカフェ→MBV"Loveless"まで彷彿とさせながら環境音楽のベストモードを堪能できます。
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「航路(上・下)」Connie Willis(
大森望 訳)
「
ドゥームズデイ・ブック」のウィリス小母さんの最新長編。「SFが読みたい2003年版」というムック本で第一位を獲得...だし、帯には"宮部みゆき絶賛"だとかで、引いてしまうヒトも結構いるんじゃないかと思うんですが、所謂"小説技術"で、これを凌ぐ本というのは当分出てこないんじゃないかという意味で、必読書と言って良いのではないでしょうか。今回特に感じたのは、会話の作り方の巧みさで、一見意味無い会話が伏線に紡がれていく様とか、断片が徐々に意味を成し始める絶妙さとか..その分だけ分厚くなってしまってるんですが、このページ数は伊達ではありませんので、気圧されずに是非読んでくだされ。どんな話かは、 大森氏の作ってる日本語ファンサイトを参照のこと。
書きたいことは山とあるんですが、面白さの説明を始めると枚挙いとまないので割愛。ただ、個人的には諸手挙げて絶賛..とはいかないよ、とヒトコト。"SF"を期待してしまうからね、どうしても。
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The First Cut/ Dr Faustus (Fellside,
2003)
このジャケト写真で英国フォーク。良く見りゃ確かに手術受けてるのは伝統楽器のメロデオン(アコーデン)。そのメロデオン奏者にして英国トラッド界の重鎮
ジョン・カークパトリックの子息ベンジー君が参加のバンドということで、
月光茶房のハラダさんに教えてもらったのがこのフォースタス博士。4人編成で、弦、鍵盤、木管に勿論ボーカル/コーラスで英国のトラッドフォーク楽曲を衒い無しの正調解釈、だけどイキの良い演奏で聴かせる傑作。去年聴いてたら2003年ベスト入りだったのに...。(彼らの)親父達世代(カークパトリック父、マーティン・カーシー...)もまだまだ前線で新境地を開拓してってますが、息子達もなかなかヤりおる。末楽しみ..つか、英国フォークは不滅だわ。
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メロン/ くじら (Epic/Sony, 1990)
最近はクレイアニメ「
家蝸牛Jam」の"お父さん"の声でしか聞かない杉林恭雄率いる(てた...)くじらの5枚目アルバム。性愛的なモチーフや記憶の中の風景描写など、独特の詩世界とメロディーを、今回は汎アメリカンなファンクミュージックに乗せて聴かせてくれます。幸田実(bass)、楠均(drums)の引き締まり具合は個人的にこのバンドの聴き所のヒトツなんですが、ここまでファンク調で貫いてるのも珍しいのでは。
駒沢裕城、
玉城宏志、
清水一登など馴染みに加えて
東京スカパラダイスオーケストラ(うち3人)が参加の1曲もあり。
...たまにライブは3人あるいは1人でやってるようですが、レコードは98年の「
木星クラブ」が最後なのでしょうか。何とか新作を出して欲しいもんです。
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Inside Satie/
Morgan Fisher (Tokuma
Japan, 1998)
過去も何度か書いてるんですが、モーガン・フィッシャーの「
Look At
Life」というLPは、モストフェイバリット○枚に必ず入れたい1枚でして、切にCD化を希望してるものの未だ叶えられず(Cherry
Redにe-mailで要望したこともあったなあ...)。そのフィッシャー小父さんがサティの"Gnossienne"と"Gymnopedie"を様々なピアノ、シンセ、メロディカetcで編曲/演奏したのがこのCD。倍音の心地良さ、音そのものの感触に拘ったキーボードミュージック。
ウィリアム・オービット「
Pieces In A Modern Style」辺りに通じるアンビエント。
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Lavalek/
Groupa (MNW, 1999)
タムボリンのカタログに掲載されてて興味惹かれたスエーデンのフォークロックバンド。1stアルバムは1983年というから既に20年活動してるらしいんですが、私はこれが始めて。どうやらこのアルバムから女性ボーカルの
Sofia
Karlssonが加入したとのこと。その紅一点も存在感十分なんですが、このバンド、とにかくインストが凄い。83年から活動ということはネオサイケとかニューウエイブの影響も結構あるんじゃないでしょうか。エコーかかったパーカッションに(クレジットは無いけど)地這い系エレクトリックベース、そのうちディジェリドゥにSEが絡んだ呪術的な展開を見せたら、フィドルで北欧トラッド風にまとめてしまう。北欧シーンの奥ゆかしさを垣間見た感じで、タムボリンも絶賛の最新作「Fjalar」が聴きたくてうずうず。
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Scenes From My Life/
Richard Bona (SME,
1999)
新作を昨年のマイベスト5枚にも入れたカメルーンのベース弾きの
ソロ・デビューアルバム。遡って購入、早速聴きまくり。ボーカル、マルチプレイな楽器演奏(ベース弾きも驚嘆の技)に作曲、メロディメイカー振りも天才的。新作「
Munia」のクオリティは既にデビュー作で十分到達してることに驚くやら。ノーチェックだったとは全くもって恥ずかしい...
ジャン・ミシェル・ピルクのピアノ(は実はあんまり目立たないかも)や、ドラムにオマー・ハキムを迎えたり...ザヴィヌル・バンドで活躍してただけあって客演も錚々たる面子。でもそういう所に耳が行かない、素直にウタものとしてじっくり聴ける
ところがこのヒトの持ち味。とはいえ、デビュー作だけあって新作よりはフュージョンぽさが強いかな。
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Sluring/ Frifot (Amigo Musik, 2003)
表紙左から... Ale Möller、Per Gudmundson、Lena Willemarkのノルウエーフォーク音楽家3人ユニット4枚目のアルバム。
MIZ.さんのHPで見かけなかったら気が付かないままでした。前作はECMからだったんですが、またノルウエーのフォーク系レーベルに戻っての録音。右2人のフィドルにマルチプレイヤーMöllerのマンドリン/フルートその他、そして勿論
ヴィレマルクの凛としたボーカル。悪かろうはずが無い、期待通りの素晴らしいアルバムです。前作より瞬発的なアンサンブルの妙味が効いてるかな。
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水のプラネット/ Reepi Cheep (日本コロムビア,
1992)
エレクトリックベースの山口和利を中心とした
、女性ボーカル、ギターからなるトリオの6曲入り1stミニアルバム(もう1枚ミニアルバムを出した後に解散しているらしい)。ドラムはクレジットないんですが、打ち込みではなさそう。ジャケット及びブックレットに
たむらしげる氏イラストをあしらいながら、"月の子供"、"夢・星・風"、"幻想の森で"なんていうタイトルが並んでることから想像する通りの音/詩世界で、ボーカルの紗浚雪絵嬢の透明なボーカルが秀逸。アレンジはもろにPoliceですが、これはパクリと云わずにリスペクトと呼びたい。その辺も含め、メジャーデビュー期のNav
Katzeと似た感触です。
正月に実家で発掘。流石に廃盤の様ですが、丁寧に作られたレコードですので、もしも見かけたら是非宜しく。
01
<My Best Music CDs, Year 2003>
"The Old Kit Bag" Richard Thompson"Extended Play" Dave Holland Quintet
"A Portrait Of Jaco" Jaco Pastiruous
"Into The Blue" Jacky Terrasson & Emmanuel Pahud
"Munia - The Tale" Richard Bona
そもそも2003年はYMOの紙ジャケ再発で始まったことが象徴してて、再発モノばっかり買い漁ってた時流にますます乏しい日々、そんななかでの2003年リリースで5枚。とにかく
リチャード・トンプソンの"The Old Kit
Bag"は傑作。これは別格。この位の"粋"に達して無いとなかなか年の代表には選べませんね。つか、ますますロックとかギターポップスとか聴けなくなってく訳です。ジャッキー・テラッソンの仏フルート奏者とのデュオ作も素晴らしい出来。"Boléro"(Ravel)のアコースティックピアノからRhodesに変わる瞬間は何度聴いてもぞくぞくする。"A
Portrait Of Jaco"は、漸く出た..という安堵と期待を遥かに超えた内容に圧倒されます。そういえばデイヴ・スォブリックのボックスセットもかなり良さそう...だけど年内に全部聴けなかったからなあ...
ああっ! "Blemish"を忘れてる!
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