This is POP!! | ©gaburu
'03.12
25
Extended Play/ Dave Holland Quintet (ECM, 2003)
副題"Live At Birdland"。2001年、名門ジャズクラブでのライブ録音2枚組みは、今年のマイベスト3枚に入る傑作。日本盤ライナーノーツ(青木和富氏)の通り「ジャズの表現のあらゆる要素が詰まっている」のだけど、ここでもう一声「ジャズのあらゆる面白さが詰まっている」と言っておきたい。聴くだにアコースティックジャズの奥深さというか、まだまだ先進的な表現が生まれてくるんだなあ..とジャズ聴いてて良かった感に浸ってます。ライブならではの心地よい緊張感、じわりと全身に染みてくる高揚感とか、臨場感抜群で思わず声出しそうになるくらい。

Chris Potter (saxophone) Robin Eubanks (trombone, cowbell) Steve Nelson (vibe, marimba) Billy Kilson (drums) Dave Holland (bass)
24
Cardinal Points/ Jean-Michel Pilc (Dreyfus Jazz, 2003)
秋以降最も聴いてたのが、このフランス人ジャズピアニストの最新盤じゃないかなあ。というのも、カーステレオ用にキャビン常備5枚のうちの1枚だったからで。そういう聴き方だったんで、これといった印象も今ひとつ浮かばないんだけど、聴き流せて且つ繰り返し聴いてても退屈しない..というあたりが重宝したのかなあ..という気も。なんて、勿論じっくり聴く価値あるいかにもフランス・モダンジャズの佳作のヒトツです。

JM Pilc (piano, whistle, melodica, percussion) Sam Newsome (sax) James Genus (bass) François Moutin (bass) Ari Hoenig (drums) Abdou M'Boup (percussion)
22
Orpheus/ Peter Blegvad & Andy Patridge (Ape House, 2003)
身も蓋も無い言い方をすれば、時節柄、ティム・バートン監督「The Nightmare Before Christmas」の音楽版とでも言うか。1990年から二人が英国Swindonで少しずつ遊びで作ってたマテリアルを発表したもので、詩読と具象音楽の混合練成。件の映画のグロテスクでブラックなユーモアがたまらなく好き..とか象徴派絵画好きな捩れポップス愛好家にお薦めの1枚。ポップスな要素は余りありませんが(そもそもが発表を前提で創ってないのでね)、難解なアートという感じは微塵も無くて、むしろ程よい遊び心が染み出てるところが良い感じです。Andy叔父さんも、XTCよりこの線で行くといいかもね(勿論XTCでこの感じが出来るならそりゃ素晴らしいけど)。
21
Munia (The Tale)/ Richard Bona (Verve, 2003)
カメルーン出身のベース弾き..つかマルチプレイヤーの最新アルバム。ワタシメ、日頃からベース聴きを標榜しているくせに、このヒトは聴いたことありませんでした。深く反省、いや後悔。今回は仏Verve移籍第一弾ですが、移籍前(SONY)に既に3枚ソロアルバムが出ている模様。
このヒトのボーカルを核にしたアフリカンポップス..勿論演奏はベース含めハイセンスなフュージョンジャズで、ウタを聴かせるという意味でもSalif Keita(客演)、80-90年代Papa Wembaなどのエッセンスが結実した素晴らしい出来。今年のマイベスト5枚に入る今年度屈指の一枚。おまけの"Liberty City"(live)でのJacoリスペクトも必聴ということで日本盤で是非。
20
Take A Look Inside .../ The Folk Implosion (1994)
初期EPにテープリリースなど追加したCD化(なの? 詳しくないんで間違ってたら指摘下さい)。
そもそもRon Johnsonつう80年代半ば英国/マンチェスターで短命活動してたインディレーベル(Stumpとか在籍)のBig FlameというバンドのCD化音源が無いかネット検索してたら、このウェブサイト掲載されてるこのアルバムレビュー の中でその名が引き合いに出されてたんで購入した...という、前振り長いっすね。
もろにWire、Gang Of FourからCaptain Beefheart & Magic Bandの線影響剥き出しのサウンドで、確かにRon Johnsonっぽい。かなり好みです。下手に消化して色が決まっていくより、こういう原色絵の具ままとかデッサンままの感じが良いんだよね 、未だポストパンク追っ駆けとしては。
 
Gone To Earth/ David Sylvian (Virgin, 1985/2003)
LP2枚組みでリリースされたソロアルバム2枚目。今回Japan後期の3枚とあわせてリマスタリングされてデジパック仕様での再発売 (やはりCD2枚組み)。
ロバート・フリップとビル・ネルソンとのコラボレーションが核になってるわけで(2枚目は全曲インストルメンタル)、リマスタリングで特にギターの音が輪郭くっきりしているのは嬉しいかぎり。二人とも音色が 独特のギタリストだけに。
ソロキャリアの中でも翳り無いのはこれだけかも。という訳で、1stソロアルバムの"Brilliant Trees"よりこれの方をよく聴くかなあ、最近は。
19
Loophole/ Sketch Show (Avex, 2003)
高橋幸宏&細野晴臣のユニット1年ぶり待望の2ndアルバム。 昨年末のライブから今年始めのEPで披露してたエレクトロニカ路線で、そのライブで既に演奏してた曲も数曲(リミックスが違う)入ってます。
高品質のエレクトロニカなんだけど、サウンド自身に1stでは溢れてた魔法みたいな感じはもう無いかな。ユキヒロ氏の歌が入ると独特の感じ(言葉で説明できない)に変化するところがこのユニットの味なのでしょう。という訳で、出だし3曲のスエーデン語ボーカル曲は個人的には蛇足。4曲目"Plankton"から聴き始めると良し。
14
Little Worlds/ Béla Fleck & The Flecktones (Columbia, 2003)
この間紹介した"Ten From Little Worlds"は、米国でリリースされたCD3枚組みのこの愛好家向けリリースからの10曲選曲だったわけで、とにかくこれを聴かんことには始まりません。
CD3枚がある種ストーリー性(お話し...というよりタイトル通り80日間世界一周旅行記的な)を持って構成されてるし、とにかく今回はやりたいことを再発見しようと素っピンに戻って録音した ある意味素材の持ち味まま料理したような音触りだから、3枚聴いても全然飽きないしお腹一杯にもならない。 勿論ラフなところは微塵も無く、クオリティも非常に高い仕上がり。エレクトリックベースとアコースティックバンジョーでアンビエントな音響モノに挑戦なんてな遊び心もあちこちに。個人的には1枚に凝縮されたセンス・オブ・ワンダーを求めたいけど、今回はその為のウォームアップとして次作までユックリと愉しませて頂きます。
13
Two Towers (Special Extended DVD Edition)
説明するまでも無いピーター・ジャクソン監督によるJRR. トルキーン畢生"剣と魔法"物語の映画第二部のDVD特別版(4枚組み+特典"モルドールへの通行証"とか)。なにしろ劇場映画で観てないので比較しようが無いんですけども、50分近くに及ぶ追補および編集がなされているということで、既に中つ国にどっぷりハマってるヒトはとにかく必携、必見。..なんてことは既にご存知のことでしょうが、ここで敢えて書いときたいのは、特典ディスク2枚に渡るメイキングもかなり面白い..ということ。原作と異なるストーリー、構成にしたのは何故か? ニュージーランドの荒野に突然現れ消えた空想の都市... 無論その他秘話が満載。これが本編と同じくらい面白いんだわ。

ところで、エリザベス・フレイジャーの名前がサウンドメイキングの部分に出てくるんですけど、録音風景の映像なしでモノクロ顔写真で終わってしまったのは残念。まさか容貌豹変したりしてないよね..
10
Lover Man/ Jacky Terrasson Jazz Trio (Venus, 1994)
テラッソンの1994年リリースの本作は、93年11月18、19日のNY録音。セロニアス・モンク・コンペで優勝したのはこの録音の直後ということで、正に注目の世界デビューということになったわけです(とワタシが知ったのはかなり後...Jon Hassellの99年作"Fascinoma"が初聴き)。リズム隊は、Leon Parker (dr)とUgonna Okegwo (b)。
1曲目"Donna Lee"の斬新なアレンジは、あのベーシストのあの1stアルバムを意識してのこと? いや他にも マイルス "Nardis"からブリューベック "In Your Own Sweet Way"、Bud Powell "Wail"などなど、かなり気合の入った編曲と演奏で、近作とは違う、若き気鋭の勢いが特徴。オリジナルは2曲ですが、独特のタイム間とメロディーセンスは今に続いてますねえ..。寒空の下を歩きながら聴くと気持ちよいです。
08
Blues Brothers 2000/ VA. (Universal, 1997)
たまに「奥様は何を聴くんですか?」みたいな質問をされることがあるんですが、基本的にうちのかみさんはそんなに音楽聴くヒトじゃないんです。聴く時は、スカかスタックス系のソウルと大体相場が決まってて、最近これを引っ張り出してきて車運転しながら聴いているらしい。言わずもがなのあの映画のリメイク。結局映画は観てないんですけど、サントラはしっかり持ってます。アレサ・フランクリンの"RESPECT"だけでも買う価値あると思うんですけどね。いや、Dr. Johnが一番カッコいいかな。
やっぱり映画観るべきなんだろうなあ...
06
Tin Drum/ Japan (Virgin, 1981/2003)
これま80年マスピースリマタリンをデパック様にナスディスク+フォトブック(ジャケ写の別バージョンを表紙にあしらったり)で箱入りにした復刻モノ。最近買うのはこんなんばっかり... 因みにJapanについては、「Gentlemen Take Polaroid」、「Oil On Canvass」の所謂後期3枚を復刻(+David Sylvianソロが「Seacrets Of The Beehive」までとRain Tree Craw)。
それこそRoxy MusicからBrian Enoのエスニック趣味、YMOにCAN始めジャーマンエクスペリメンタルの影響まで、関連付けようと思ったら色々語ることはできるんだろうけど、じゃあそれら全部ぶち込んだらこの音になる...訳は無い。このメンバーだからこそだし、脈絡無い突然変異的な独創性はいったいどんな過程で発露したのか、実現したのか。創造の過程を覗き見ることできるドキュメンタリーがあるのなら一度観てみたい。いやこれまで聴いてきた音楽の中で一番影響受けた1枚を選ぶならこれ なんだろうなあ...と聴き返しながらつくづく感慨してしまったり。
03
Snakeman Show (Alpha, 1981)
スネークマンショウの"正規"アルバム2枚に「海賊盤」、「ピテカントロプスの逆襲」まで4枚、リマスタリングに初回プレス限定紙ジャケットでリリース(SONYから)。インナーも復刻で、帯も当時の再現... さらに来年早々には76年から80年までの未収録音源やら纏めた「スネークマンショー・アンソロジー」という奴も出るそう(こっちはUniversalから)です。"まあ、どれを聴いても似たようなモンですが..."、どれか1枚だけというなら、選曲も抜群なこの1枚目ということにしましょうか。細野+高橋のリズム隊もたくさん聴けるし("ごきげんいかが 1,2,3"はSketch Showの「Audio Sponge」でも再録)、"レモンティー"も数ある中でこれに入ってる奴が図抜けてカッコいいしね。"盗聴エディ"はじめネタの切れ味も"低めにビシビシ!"って感じで、これこそ80年代マスタピース...って言い過ぎ?

2006年2月