This is POP!! | ©gaburu
'03.05
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A Dog Smiled/ 高橋幸宏 (Conspio Records, 2002)
副題が"yukihiro takahashi selection '97-'99"。ということで、90年代後半のコンピレーション。90年代になってからはライブ盤「A Night In The...」くらいしか(これは傑作ですけどねー。小坂忠は"ありがとう"で始まり、"はらいそ"で終わるという...)聴いてない不義理なファンですが、これ聴いてかなり反省しました。80年代の傑作から昨年のSketch Showまで、ちゃんと繋がってる...というか着々と熟してる感じがします。シンプルなサウンドだけど気が利いてる。つまり、ポップスとして非常に完成されてる、ということ。ワタシには色々漁らずともこれだけで良いのかもしれません。編集盤だからの完成度かもしれないけど。は、これから一寸検証予定。
 
「ドゥームズデイ・ブック」Connie Willis(大森望 訳)
1995年に単行本で邦訳出てたらしいConnie Willisの時間旅行モノ長編。14世紀に調査の為派遣された女性と、送り込んだ側を描いた話で、時節柄、SARS状況と重なってしまうという、タイムリー過ぎるストーリー。この文庫化で始めて読みました(いや、Willis自体始めて)。SFでなければ成立しない話なんだけども、所謂"Sense of Wonder"はありませんね。むしろ良質のミステリのような..というか小悪魔的ともいえるストーリーテリングで読者を殺すタイプ。で、ワタシも殺られてしまいました。一見1100頁超のかなりの量ですが、直ぐにはまるし(はめられるし)、夢中になって最後まで行ってしまうこと請け合い。帯言葉に偽り無 い傑作。
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ウォレスとグルミット「ペンギンに気をつけろ」原題: The Wrong Trousers
監督・制作: Nick Park
日本語吹き替え: 萩原欽一
Aardman, 1993

新作はウォレスの珍発明にまつわる10短編を集めたモノで通算4作目ですが、さてウォレスとグルミット・シリーズの出世作といえば強盗ペンギンが登場するこの2作目でしょう。細部の凝り具合といい、粘土アニメーションとは信じ難いスピード感といい、これが未だにシリーズ最高なのは変わらずだと思います。個人的には、より手作り感強い1作目が大好きですけどね。1994年アカデミー賞アニメーション部門最優秀賞受賞作。(89年作の1作目は90年にノミネートのみ)
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ウォレスとグルミットのおすすめ生活 原題: CRACKING CONTRAPTIONS
製作総指揮: Nick Park
日本語吹き替え: 萩原欽一
Aardman, 2003

既に公式サイトの会員向けページでは殆ど動画配信されてたんですけど、ようやく出ました新作DVD。英国はブリストルにある粘土アニメーション工房"Aardman"はNick Park氏作畢生のキャラクター、ウォレスとグルミット。全10話からなる短編集。会員予約特典のタオル付きでの購入です。いや嬉しい。まあ、1~9話は既にネット配信で観てたので、それ程感動はありませんが...おまけ収録のNick Park含むスタッフインタビューからなるプロモーション映像、メイキングに、改めて心動かされました。いや、いいねえ。こういう仕事をクリエイティブと呼びたい。
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HOPE STREET MN/ Tony Hymas (nato, 2002)
Michel Portalの「MINEAPOLIS」で鍵盤弾いてたTony Hymasのジャズトリオ。Billy Peterson (b)にEric Kamau Gravatt (dr)。アブストラクトな前半 は、そのミネアポリスでの演奏から期待する感じではあるんだけども、むしろテーマが明瞭な曲で構成された後半が意外性もあって好みでした。メビウス画の美麗なジャケット絵とも合ってるしね。#7とかなかなかの佳曲。
因みにこのヒト、Jeff Beckの80年代バンドでパーマネントな鍵盤担当だったとは、検索して始めて知りました。
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"ATOM is born"/ 小西康陽 プロデュース (東芝EMI, 2003)
鉄腕アトムのテーマを色んなヒトビトがリアレンジ、リミックスしました...な2003年4月7日記念の企画盤。冒頭の烏龍茶CMバージョンに始まる小西康陽はじめコモエスタ八重樫から永田一直など。で、Pacific231が1曲参加しているので購入。ファンキージャズ風にデュークエイセスが歌とか洒落モノの遊び心は判るんだけど、Pacific231の本格派モンド音楽の世界を聴いてしまうと、やっぱりこの路線はもう良いかな...という気にも。しかし何故Pacific231(ここだけ"ロボット・マーチ")が入ったのでしょう??
なおミニ本の漫画付き。CCCDです。
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公式BOOTLEG/ 栗コーダーカルテット (The Kuricorder Foundation, 2001)
CM曲"煮物上手"、のライブ版から"移民の歌"笛バージョン、そして勿論「家蝸牛ジャム」のテーマまで。デモから数々のCM曲、ライブ音源全51曲をぶち込んだ公式海賊盤は、ツアー用パンフレットの付属CDとして制作したものをリリースしたもの。購入後応募すると漏れなく「栗Q本」というバンド解説本が貰える。これがまた最高の出来です。"作る"ことの面白さを受け手にも味わわせてくれる稀有なバンドだ、ホンと。
収録ライブ音源の多くが触りだけ...というのが残念。なので、リリース未定なCD17枚組み+100頁ブックレット+初回特典DVDというライブ音源箱を是非実現して下され。
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THE LURE OF MELODY/ PASCAL+MISTER DAY (Glasgow Underground, 2001)
Pascal RiouxのインストルメンタルにMister Dayのボーカルというコンビで2作目。前作「HIGH FLYING」もかなり良かったんですが、今回もまた、80年代ブルーアイドソウル(Simply RedからCuriosity Killed The Catとか)の系譜を最小限の構成(殆ど二人とか三人で録音)で演ってて、かなり絶妙。 シンセとギターの微妙な味わい、線細めのソウルボーカルのコンビネーションに免疫無い趣味人にお薦めのヒトビト。
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a livingroom hush/ Jaga Jazzist (Beat Records, 2002)
ボーナストラック3曲追加の日本盤で漸く購入。このジャケットで買いたかったもので...。
さて、基本的には全くのジャズ語法によるアナログな部分の面白さが核になってるライブバンドかなという印象。冒頭の暴れっぷりがもっと 暴走すると違うところに行ってしまいそうで、どちらかというとそういう線を期待をしていたんですが。逆に新型高性能アシッドジャズ感じで、これはこれとして面白いっす。ライブも含むボーナストラックがかなり良い感じ。"Plym"路線で行くのも面白いかも。
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A Magic Wand Of "Standards"/ GONTITI (Pony Canyon, 2002)
学生時代からだからもうかなり長いことファンやってるんですけど、飽きませんなあ。まあ三度の飯の様に色々音楽聴いたりしてると、たまにはフツーの水しか呑みたくな い時が出てくるわけで、そういう時にはゴンチチ(特に「PHYSICS」あたり)聴きたくなります。清水一登も噛んでるこのスタンダード・ポップスのインスト演奏集も、特に何と言うことも無いんですが...上質な聴き流し音楽。
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The Walk Of The Giant Turtle/ Erik Truffaz (Kameleon Music, 2003)
これまでより、かなり60年代末のジャズロック傾倒強くなった印象。フランスのポスト・マイルス・トランペット吹きErik Truffaz率いるカルテットの新譜は、ソフトマシーンからクリーム、ジミ・ヘンドリックスとか、ジャンルの融合創生が爆発的に起こったその時代の混沌を取り戻そうとするような意気を展開してます(ジャケットも今までと趣向変えてきてるし)。Patrick Mullerのフェンダーローズが凄い。ローズ好きには堪りませんな。
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Punk Jazz/ Jaco Pastrious (Rhino, 2003)
流石はRHINO。67年に自宅録音した"The Chicken"から、Airto Moreira、Joni Mitchellまで網羅したコラボレーション・ワーク集のdisc1に、Word Of Mouse/ Jaco Pastrious Big Bandに死後リリースされた3枚目「Holiday For Pans」を中心に収録したdisc2。殆どが既発音源とはいえ、これだけ丹念に編集されたベスト盤もそうはありません。その辺、初めてのヒトよりファン向けといったところもありますが...錬金術的なイマジネーションにこそ音楽家Jacoの真髄がある...ということを何とか伝えよう、という篇者の心意気に感服。ジャケット写真だけでも"買い"。
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「錬金術師の魔砲」J. Gregory Keyes(金子司 訳)
革命を凌いだルイ14世がフランスに君臨する18世紀初頭、英国との戦争で敗北目前のルイ国王は元ニュートンの友人で弟子だった科学者の「一瞬にしてロンドンを灰塵に帰す兵器」の提案を耳にして...てな話。エーテル理論が成立してる世界が舞台で、若きベンジャミン・フランクリンが主人公(のひとり)。ファンタジーかと思わせて、実はハードSFじゃないか...つうくらい、アイデアが面白いし、活劇的要素も満載で一気に読めるし、何といっても謎解きほぐれてないネタがそこかしこに...つうところが堪りません(解かれてしまったらツマランもんね)。ファンタジー愛好家よりむしろセンス・オブ・ワンダーなヒトにお薦めです。
 
Electric Brain feat. Astroboy/ Music Robita, 2003
鉄腕アトムつか"Astroboy"をテーマにした国内外11音楽家各1曲ずつをコンパイルした企画盤...という触れ込みですが、これはかなり良質のオムニバスレコードになってます。いや、鉄案アトムと何の関係があるか判りませんが、デトロイト・ライクなテクノからミニマル電子音響なサイケデリック・ギターサウンドまで、どの曲/演奏も粒揃い。この手だと「攻殻機動隊」の企画盤とかをつい引き合いにしてしまうんだけど、テクノ~エレクトロニカで埋めなかった分、各曲の完成度も合わせ、こちらが数段出来良い。買うら、回プレのアムジャット是非。

Mijk Van Dijk、ケン・イシイ、Technasia、レイ・ハラカミ、Co-Fusion、Ree.K、Atom Heart、井上薫、細野晴臣、Cold Feet、ROVO
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C'MON/ Town And Country (Thrill Jockey, 2002)
4ピース・アコースティック・アンサンブルのアルバム3枚目。そこはかとジャズっぽくもあり現代音楽のようでもあり、フォーク音楽の様でもあり...という訳で、ミニマルな室内楽を演ってるわけですが、初期ソフトマシーンというかロバート・ワイアットのようにも聴こえます(つまりは60年代末英国の実験的ジャズに音の感触が極似してるというか...)。そういう意味で聴いてると既視感に襲われることままあり。ジャケット絵もそれ風じゃない?
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folk songs for trains, trees and honey/ savath+savalas (hefty records, 2000)
Scott Herrenのプロジェクト。"コンピューターに過度に依存しないシンプルでオーガニックな音楽がやりたかった..."ということで、始めたんだとか。 アコースティックといってもレコードに記録されるのは結局のところ電子音響じゃないの..という加減の生音と電子音の混ざり具合は、いつ聴いても気持ち良過ぎ で、これまたある意味贅沢な聴き流し音楽。通勤時間の半分しか持たないのが唯一の欠点。まあ、その長さが丁度良いんだけどね。
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「TYKHO MOON」Enki Bilal監督(DVD)July Delpy, Richard Bohringer他 そのEnki Bilal監督の映画2作目。
月都市の支配者一族への反体制派だった男を巡って、テロリストやら請負暗殺者が交錯する...といった話。都市内部に侵入してくる砂と、希薄な空気、少しずつ壊れていく街...と漂う退廃と閉塞感が独特の時間感覚を作り出してて、ブレードランナーよりディック的。ワタクシ的には出鱈目さも含めてもろ好み。予告スチールもほぼ完全収録で、Bilalのインタビュー(?)映像もあり。その辺はLDとほぼ同じですが。
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「L'ÉTAT DES STOCKS」Enki Bilal(Les Humanoides Associés, 1999)
BD(フランスのコミック)の今や大御所のヒトリにして映画監督としても「Tykho Moon」などものにしてるEnki Bilalの画集。その「Tykho Moon」の資料画やらBilal版"Tin Tin"(ベルギーの国民的漫画キャラクター)、ルノー用のデッサン、それにベルヌの「海底2万マイル」表紙画などなど。 コミックからの採録よりも資料的イラスト多数収録が嬉しい。BDファンなら必携の1冊。映画観てぐっときたヒトビトも是非。
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HELIUM/ Tin Hat Trio (Angel Records, 2000)
ニッティング・ファクトリー系のギター/ヴァイオリン/アコーデオン・アンサンブルの2ndアルバム。トム・ウェイツが1曲ボーカル入れて締めてる以外はインスト。1stはリーダーもMark Orton弾くギターはバッキング中心でアコーデオンを比較的前面に出した"それ風"タンゴでかなり良かった記憶があるんですが、今回はギター軸の音でかなり聴きやすくなった印象。Bob Burgerぼアコーデオンも中東風やブルースコードもあったりと、かなり幅広げてる感じ。映画的という言い方もあるかも。
昨年3枚目が出てるらしい。
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GUAMBA/ Gary Peacock (ECM, 1987)
ジャズベース弾きGary Peacockのリーダーアルバム。ドラムがPeter Erskine、サキソフォンJan Garbarek、トランペットPelle Mikkelborgの取り合わせで、キース・ジャレット・トリオ(Jack DeJohnetteとのリズム隊)とはまた趣異なるパーカッシヴなアンサンブルが聴ける#4あたり、このバンドの白眉ではないでしょうか。Jan Garbarekのサキソフォンに少しビ・バップの熱が混じってる感じがしたりして、単にいかにもECMな音以上の色が出てる気もします。Peacockの演奏の中でもかなり好きな1枚。
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CHAMELEON/ Bill Nelson (Fabled Quixote, 2002)
Bill Nelsonが80年代初めに制作した、"ラボ・ミュージック"を集めたアルバム。ラボ・ミュージックつうのは、映像などのBGMなどに用いる材料音楽のことらしく、当時、そういう音楽材料を提供する会社向けにNelson師が作ったものを、今回発掘してリリースしたというもの。ギター音楽ではなくシンセを駆使して自宅録音したものばかり。皆インストですがちゃんと曲として成立してます。マニア向けともいえるが、シンセベースのあの音が好きなヒトにも格好な聴き流し音楽。
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「慟哭」貫井徳郎
1993年の鮎川哲也賞候補にもなったこの作家の処女長編。 連続幼女誘拐殺害事件を追う警察(まあ捜査一課長が主人公か)を描いた話です、簡単に言うと(何を書いてもネタバレになりそうなんで...)。ワタシはミステリーの読み手ではないので、作家の名前も(無論この処女作後の大変な活躍ぶりも)知らずに手に取ったんですが...確かに処女作とは思えない"練達"な文章。緻密な展開。まあ、その分ネタはすぐ判ってしまうんだけども、逆に判って読み進められるからこそ緻密な書き口が気持ちよいというか。堪能しました。さくさく読めるし。 文庫で少し追っ駆けてみようか。
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TREMULOUS ANTENNA/ Be Bop Delux (Hux Records Ltd., 2002)
Bill Nelsonが率いた70年代パンンク前夜に80年代を完全に先取りしてたキッチュでテクノでパルプなパワーポップ・バンド"Be Bop Deluxe"のBBCライブ音源集、全16曲。サディスティック・ミカ・バンドからフランク・ザッパにDEVO、バズコックス、XTC更にカーズまで繋がるクイーン系という。滅茶イカシてます。
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「ベトナムの少女」Denise Chong(押田由起 訳)
邦訳版副題"世界で最も有名な戦争写真が導いた運命"。中華系カナダ人女史が緻密な取材と淡々とした筆致で綴る、南ベトナム軍のナパーム弾攻撃で重篤な火傷をったベトナム人少女キム・フックの半生をカナダ人著者が記録したノンフィクション。 米軍のベトナム戦争介入を終結に導いたと言われている彼女を写した1枚の写真(表紙)、その写真が彼女の運命を翻弄していく..。といった話。時期が時期だっただけに(読んでたのが丁度3月後半から4月...つまり英米-イラク戦争の真っ最中)、文字で描かれるベトナムと遠く(イラク)の現実世界が交錯したりも。

2006年2月