This is POP!! | ©gaburu
'01.05
31
Look Into The Eyeball/ David Byrne
(Virgin Records America Inc., 2001)

ほんと、程よいインターバルでアルバム出してくれる几帳面なデビッド・バーン。自分は、とにかくこのヒトのボーカルが好きで堪らないんで、トーキング・ヘッズ時代からソロに至るまでボーカルものアルバムは(今のところ)全肯定。前作の「Feelings」なんて、もうジャケットからしてカッコ良過ぎで、聴きまくったもんです。
パーカッションを軸にしたエスニック趣味と、独特のフォーキーなメロディー、ボーカルが溶けあう音楽。東南アジア系、下アフリカもありだけど、ベースは得意のブラジル音楽導入路線と言えるか。あまり濃厚に傾倒してない軽さが、頭と体のバランス程良し。前作よりサウンド自体の捩れ具合が薄い分、実は素直に気持ちよかったり。
次はまた3年くらいしてからですかね。それまでこれ聴いて待ってます。敬具。
23
each eye a pass/ Mick Kahn
(Medium productions, 2000)

元ジャパンの(という枕詞は...やっぱり、ね)ユニーク・ベース弾き、ミック・カーンの最新のソロアルバム。そのジャパンの"Quiet Life" "Tin Drum"のベース・プレイというのはそれこそ衝撃的だったわけですけど、バンド解散直後のソロアルバム1枚目こそその延長に在るかのようなフレーズ多用してたものの(これ傑作)、2枚目以降、動的というよりむしろ低音域下で蠢く様なスタイルへと(少なくとも自ソロ作においては)収斂。バス・クラリネットを多用したりと、抑えた音作りで非常に地味なアルバムへ。
で、この最新盤も基本的にはその路線と言えるのではないでしょうか。変わらずの、スティーブ・ジャンセンとの共作を中心とした自宅録音で、ベース・ギターよりも鍵盤の緩慢な繰り返しと、エスニックなパーカッション・ループが印象的。夕暮れの木立の深い緑、深く濃い空の青、みたいな少しずつ翳っていく日の終りのような音の色変化。陰鬱では無いんだよなあ...。まあ、地味ではある。
"ジャパン時代のベースプレイよ再び"と期待するむきには、やっぱり...みたいな肩透かしかもしれませんが、独特の陰りと深い色味が好きなヒトには、ユックリと沈み込んでいくような安息が得られるかも。取り敢えず2度聴いてみて欲しいな。
21
ARZACH/ Moebius
(ibook, inc., 2000)

フランスのコミック(BD)界最重鎮メビウスことジャン・ジローの代表作、にしてファンタジー・コミックの最高峰のヒトツと言っても良いんでないでしょか。台詞なく淡々と綴られる、竜鳥乗りの男の活躍(?)。画力もスゴいが、それ以前に造形と空間演出のイマジネーションに圧倒されます。見開きで迫る合戦シーンの弩迫力には声を無くす。因みに、お薦めはフランス語版のハードカバー本。(英語版は多分ペーパーバックがあったけど今は多分絶版中) 冒頭の本人自画像も登場のサイケデリックなエッセイ風は白黒だけど、本編は美麗な総天然色カラー。アルザッハの短編5本とイラスト数点を収録。
「ヘンゼルとグレーテル」の頃の大友克洋氏なぞ、もろに影響受けてますので、あの辺好きな方は必見でしょう。色んなSF映画(エイリアンとかトロンとか)のイメージデザインを手がけてることでも有名なヒトなんで、初めて接するヒトでもなんとなく馴染みのある雰囲気かもしれない。あ、最近ジミ・ヘンドリックスの肖像イラストが良く使われてますね。
他に、翻訳者が書いた小説版というのが出てて、これは英語で入手可能。メビウスの短編コミックからインスパイアされたアルザッハ世界の紹介、つーか昔懐かしテーブルトーク・RPGのネタ本みたいで、これも結構面白いです。
19
Good People/ Hellborg Lane Selvaganesh
(Bardo, 2000)

末期マハビシュヌ・オーケストラのベーシスト、ヨナス・エルボーグのトリオによる最新のライブ盤(つっても昨年リリ-ス)。このヒトの(多分)一番最初のソロアルバム「Elegant Punk」(1984)、個人的にはジャコ・パストリアスの"Word Of Mouth"に次ぐ頂上ベーシスト・ソロアルバムだったんですけど、2枚目以降「驚異のディストーション・ベース」などと持て囃された時期は、正直ツマンナかったです。(ジャケットはインパクトあるんだけど...)
それが、ここ数年、またシンプルでかつ濃密な音世界が復活。今回紹介のこのライブ盤も近作の定番構成タブラ(ウードゥ)/ギター/ベースのトリオもの。馬鹿テク・トリオというと自分プライマスが浮かぶんですけど、ギターの表現力はこっちの方が圧倒的に上(だと思う)だし、パーカッションの紡ぐエキゾチズムもこなれてて、超絶技術ならではの高揚感。(プライマスと比較するのはどうか...という話もあるが) #3の口述タブラとでも言うか、パーカッション氏のボーカルがこれまた凄いッス。
近作はイタリアでのライブ盤が続いてるんですけど、確かにイタリアン(つーか地中海系)・プログレに通じる"濃さ"があるかも。
17
The Heart Of Things Live in Paris/ John Mclaughlin
(Universal Music France, 2000)

"ジャズ、フュージョン・ギタリストでその名を知らぬヒトはよもや居まい的大御所"第二段、ジョン・マクラフリンの昨年初めに出てたライブ盤。1997年作の「The Heart of Things」の面子によるパリでのコンサートから収録したもので、凄腕12本の怒涛のアンサンブルに血湧き肉踊る。いやはや#2のテーマで様子見た後に一気呵成に走り出すリズム隊とギターxキーボードの派手な掛け合いのスペクタクル。「とてもヒトが為せる技ではないー」などと考える暇も無く、頭の中真っ白。ゲイリー・トーマスのサックスもウェイン・ショーター風の透いた青色で良し。これ、2日分収録の完全盤とか出してくんないんですかねー。
そもそも、このヒトが70年代率いたマハビシュヌ・オーケストラなんてな、"太陽と戦慄"時分のキング・クリムゾンとタメ張るハイテク・ジャズロックキメてた訳で、この盤聴く限りはそのテンション、まだまだ滾ってるなーという感じがします。シャクティなんて枯れた事ばかりでなくて、こういう究極ジャズロックもまた出して下さい、お願い。
15
Anthology/ George Benson
(Rhino/Warner Archives, 2000)

ジャズ、フュージョン・ギタリスト(あとボーカル)でその名を知らぬヒトはよもや居まい的大御所、ジョージ・ベンソンのCDx2のベスト盤。リリースはライノからで、秀逸なブックレット付きの相変わらずイイシゴト。瑞々しい若かりし頃から次第にエッチなにやけ顔に変わってく様もまた愉しです。
さて内容。別に思い入れあったり、マメに追っかけて聴いてきたこともないんで選曲が妥当かなんてコメントできませんが、メロウ一辺倒でない曲の並びは絶妙(ビバップなジャズギターの後に"White Rabbit/Jefferson Airplane"持ってきたりとか、インストとボーカル曲の並びとか)で起伏がメチャクチャ心地良い。
丁度最近またぞろのフュージョン・モードでCDで"Breezin'"とか聴きたいなと思ってた矢先。このベスト盤は重宝。これ持ってりゃ個別に買う必要無いかも。日本では細野晴臣師で有名なチャタヌガ・チューチュー(D1#6)の絶妙なアレンジが堪らん。
14
the light program/ Jah Wobble
(30 Hz Ltd., 1997)

ジャー・ウォブルと言えばブースト気味の重低音ベースサウンドに定評ありますが、ソロ作の多くは、コンセプト変えながら独特のエスニック・ポップを探求してる佳作多くて、むしろその汎中東洋的な世界観(つーか節操無い雑食エスニックポップス)が愉しい。
で、このアルバム、スケールでかい(富田勲的と個人的には思うのですけど..)メロディーとイスラム的神秘主義とが相乗した傑作。盟友マーク・フェルダとのコラボレーション中心で、ウォブル氏のベースと相性抜群な元カンのジャキ・リーベツァイトのドラムも2曲。 たゆたう旋律に身を任せてゆっくりと浮いたり潜ったりしながら、曲毎の時に意表突く展開に気持ち良くなってくると、ベースサウンドの効きもまた格別。
因みに、ジャケットスリーブが凝ってまして、やや厚手のトレース紙みたいな半透明のシートで、折り重ねて透かすと光と風景写真が重なるという。自レーベルからの第二段アルバムってこともあってか、気合入ってます。
05
Undertow/ Sidsel Endresen
(Jazzland Rec., 2001)

これが初めて聴くアルバムですが、ECMなどから90年代に既に5枚前後のアルバムリリースがある模様。声とボーカルスタイルはまさしく北欧のジョニ・ミッチェル(笑えるくらいに...というところもあったり)。
過去作はこれからチェックするとして、このアルバムはAudun KleiveやBugge Wessltoftなど気鋭のノルウエージャズ畑音楽家が参加。が、ジャズ的なサウンドかと言うと(何がジャズ的かという話はあるが...)、むしろアンビエント的な電子的かつ有機的サウンドスケープ(音像)。楽器アンサンブルの妙で聴かせるのでは無く、濃密なノルウエーの深い森の中の大気と静寂を音にしたという風で、あくまでボーカルの個性を際立たせる演出に徹している職人技。ジョニ・ミッチェル70年代中盤の一連のフュージョン作品がひたすら広がる大陸の砂岩と植生を匂わすのと同じように、水と酸素、木漏れる陽光の肌触りを幻視できる、かも。いかにも北欧らしい強く透るボーカルは、"逃避"には少し重いので注意。

2006年2月