This is POP!! | ©gaburu
'01.03
31
No One Here Gets Out Alive/ The Doors
(Bright Midnight Records, 2001)

2週続けてドアーズで御免。しかも、ドアーズ好き以外には多分気に掛からない箱モノ。だけど、先週末に届いた今回のお薦め、これ以外のことは今週書けそうに無いんで...。
1979年にLAのラジオ番組「InterView」が放送した"ドアーズ特集4回モノ"を収録したCD4枚組のボックスセット。Jim LaddというDJのこの番組(毎週月曜日オンエア)のドアーズ特集、その後150セット限定でLPセット(これも4枚組)がリリースされ、現在では入手ほぼ不可能。で、海賊盤で粗製コピーが500$もの高値で出回ってたという曰く付き。オリバー・ストーンが映画「ドアーズ」を撮影する前にも、これを聴いたという位の希少かつ貴重盤。それもその筈で、1971年パリでJim Morrisonが死んだ後、始めて公式に残り3人のインタビューがオンエアされたというもので、数々のドアーズ本があるものの、この肉声証言こそが決定版といえるもの。今回CDサイズでほぼ忠実に元のLPセットを復刻(前回と同じくライノの発掘シリーズ)。
アリス・クーパーが一瞬登場するのはご愛嬌として(笑)、前編残りのメンバー3人が夫々語る貴重なエピソードに溢れてて、かつ挿入される演奏(レコードから或いは/当時/未発表の貴重なライブ音源)も絶妙。番組自身の内容・構成も素晴らしいもの。直に本人の喋りのニュアンスで伝わってくる、興奮、敬意、プライドなどは、活字では得られないもの。単なるレア音源の復刻と見過ごすなかれ。
 
UCLAでのジム・モリソンとの出会いと最初の曲「Moonlight Drive」が生まれた瞬間を興奮気味に喋るレイ・マンザレク。時折笑いながら、バンド結成のイキサツを「とにかく"そうなったんだ"と言うしかない」と答える、ジョン・デンズモア(こんな声だったのかあ!)。ライ・クーダーがまだ10代だった60年代半ばにバリバリのスライドギターをスタジアムに響かせたロビー・クリューガー、「他に弾き方を知らなかったし」と笑う。モリソンがパリで死んだという報せを早朝4時半に受けたという(「それまで14回死んでたから、最初は全然信じなかったよ」と笑いながら話す)、マネージャーのダニー・シュガーマン。
26
Live in Detroit/ The Doors
(Bright Midnight Records, 2001)

ライノが始めたドアーズ関連希少音源CD化シリーズの第2段。1回目は、シリーズ予定音源から選曲したサンプラーだったことを考えれば、実質シリーズ最初の発掘音源CDと言ってよいでしょう。「LA Woman」録音期間中(1970年)にデトロイトで行ったショーの、文字どおりの完全収録。
「Morrison Hotel」リリース後で、ショウはLPでも1曲目の「Road House Blues」のイントロで幕開け。ジム・モリソンのMCを挟んで、偉大なる1st1曲目「Break On Through」に入っていく掴みで既に鳥肌(ええ、カッコ良過ぎで涙出てきましたとも<マジ)。この日のコンサートはバンドも興がノッて予定より1時間長く演奏したとかで、その部分がdisc2になるのかな。客の熱烈なリクエストで「Light My Fire」を演った後に、元ラヴィン・スプーンフルのジョン・セバスチャンがギターで参加し、ブルース、ロックンロールなどのルーツ音楽を演奏。レイ・マンザレク(オルガン)のボーカルはまあイマイチなんだけど、休憩後のモリソンが戻ってからはビシッと締まり、クライマックスの「The End」へと。
録音状態は◎だし、ジム・モリソンの調子も最高。ライブ告知ポスターを復刻して綴じ込む辺りの気の利かせようもライノならでは。ドアーズ好きならこの際ネット通販に手出すのも悪くないかもよ。
19
Our Backyard/ Nine Yard Orchestra
(Groove Attack Production, 2000)

ちょいラウンジ風ゴンチチ(チチ松村氏ソロ作風ともいう)の次に、70年代調ディスコファンク。3曲目えせブラジリアン・ファンク、続いてアフリカ70風アフロ...。そういう出鱈目な曲の並びを"是"とする老若男女に是非探して貰いたいのがこの"Nine Yards Orchestra"。ドイツ人マルチプレイヤー二人組み。
せいぜいが4人で創ってるとは思えないくらい、多彩な曲調。えせワールドミュージックてんこ盛りってな訳ではなく、ミニマルなアコースティック・ギターインストもあれば、タブラとフレットレスベースが雨垂れのSEの上で欠伸するアンビエントな曲も。で、演奏の中心は2人だから、基本的な音の色合いが同じ。最初から最後まで違和感無くずっと聴けてしまうチャンバー・クラブサウンド(自家撞着)。それこそ節操無しに何でも聴く音楽好きが、自分の愉しみにテープ1本編集するなら、こんな感じじゃないの...、って具合。本家では熱いグルーヴも、淡々としかしそこはかと盛り上げる温熱具合が気持ち良い、筋肉凝り癒し系のシップ薬音楽。めっちゃカッコいいサウンドをおくびにも出さないヒト食ったジャケットもセンス良し。末永く"使える"1枚。かなりのお薦め。
12
Home/ Goran Kajfes
(KAZA(EMI), 2000)

KAZAというスエーデンのEMI系列ジャズレーベルが、最近凄く気になってまして、そもそもこのアルバムが切欠。ゴラン・カイフェスというトランペット吹きのソロ・アルバム。
草木の中に放置されたシーケンサー。その前に座してトランペットを吹く男。ジャケットの絵が物語るとおり、オーガニック(植物的)とエレクトリック(電気的)の混ざり合ったジャズ・ロック。合成有機物のプラスチックな感じじゃなくて、"混ざり合ってる"ってとこがポイント。
1曲目ジョン・ハッセル風のエスニックなパーカッション・ループで開け、歪めたトランペットがブレイクビーツの上でキーボードと絡む2曲目。レゲエ風の太く深いベースを効かせた、ジャー・ウォブル調マイルス解釈から、ブラジリアン・パーカッション(ティンバレスと言うのかな)が祝祭的に盛り上げるスパニッシュ。ウッドベースの弦倍音をループさせたり、リズムトラックの多彩さと音響への凝り具合は、派手さを抑えた分、じわりと効果的。
その上で、寒暖自在なトランペットの牽引力(曲によっては同世代の管奏者達があわせたり掛け引いたり)。メロディーがまた印象的(つまり曲も良いってこと)。エレクトリック・ピアノ、オルガンのアシッドさ加減も、また。電気的なジャジービーツと言えば直ぐ引き合いに出される"70年代マイルス"の混沌や緊張感とは違って、どっちかというと中期以降のリー・モーガンなんかに近いクールさ。最後に、オーソドックスなハードバップ風トリオ演奏の小曲で閉めるところも、良し。
05
Between Drinks/ Honolulu Playboys
(5000 records, 2000)

Booker T & MG'sとかのスタックス系インスト・グループ、Jimmy Smithのオルガン・ジャズ、60年代モッズ好きな少年少女(年齢でなくね)はこれ必聴。国籍不明、ロンドン録音のインスト・バンド、「ホノルル・プレイボーイズ」のデヴューアルバム。
もう言うこと無しです。スティーブ・クロッパーばりのエッジ効いたギター。60年代風ハモンドオルガンのくるくる回るジャズ・グルーヴ。リム多用した軽めのリズムにパーカッション。シンプルな構成、スカスカだけど"立ってる"音。キャッチーなメロディー(これまた、マーキーズとかついつい聴き返したくなるような60年代風)。JTQみたいな疾走しまくるアシッド・ジャズとはまた違う、アシッドでロッキンなジャジー・ビーツ(意味不明)。涼しげ。
ドライブに最適。車中に1枚、必需。あ、ビール党のあなたも、是非、これ聴いて「かあっ」と。(飲酒後の運転は控えめに)

2006年2月