This is POP!! | ©gaburu
'01.02
26
Paradise of Replica/ After Dinner
(Bad News Records, 2000 original: 1989)

山田章博という漫画家氏の単行本というか画集というか、で知ったと記憶してるんですけど、この"AFTER DINNER"(後書きで対談かなんかしてたのかな?確か...)。当時(というと80年代前半)京都辺りで活動してた筈。ヴォーカルのHACO嬢を中心としたユニット。かれこれ20年近く昔憧れたバンド。が、先日一時帰国の際、御茶ノ水のディスクユニオンに案内してもらった時、プログレのフロアでこのCD再発盤が新譜として積んであって、つい購入。(実は前日博多駅構内の本屋で、山田章博の短編集を買ったばかり。なんたる偶然...)
この「模造人間の楽園」は、2nd(らしい)の再発CD化。
機械仕掛けの西洋人形が、自動演奏の機械ピアノにあわせて歌う、透明で儚げなソプラノヴォイス。マニュピレーター、キーボード、シーケンサー...電子楽器がベースの音なんだけど、歯車や蒸気で動いてるような、チャンバー・テクノ。弦楽器やパーカッションのアコースティックな楽器の響きも、何か機械仕掛けの演奏者が居るようで...。クラシカルでいてエキゾチックな(ブルガリアン・チャント風の荘重にも聴こえるコーラスもあれば、沖縄風の風変わりな節回しも)感じは、キリング・タイムなんかにも通じる気はするけど、むしろ分厚いアンサンブルよりも、どこかチープさというか隙間を残した涼しげな感じが独特。
いろんな音楽が溶け合ってるけど、出し方が凄く自然。わざとらしさや過剰さが無い分、一見静かで地味だけど、奥深い"こく"が。「After Dinner(食後に)」とはよく言ったもので。耳や脳が凭れた時用に是非買い置きを。すこーしだけ発泡作用もあり。
19
High Flying/ Pascal + Mister Day
(Glasgow Underground, 2000)

とても懐かしい感じ。身も蓋も斬新さの欠片も無い、90年代始め頃のUKブルーアイドソウル・リスペクタブルなクラブ・サウンド。ハウス作りのフランス人Pascal Rioux氏がMister Dayのボーカルをフィーチャーした、ソウル・ポップス。
当時シカゴハウスのクールでジャジーな感じの影響受けながら、70年代のディスコやソウルへの憧憬を素直に出したUKソウル・バンドが結構あったじゃないすか。グルーヴィーなコーラス・グループ"The Pasadenas"とか、アラン・ツーサンをプロデュースに迎えたりしてた"Curiosity Killed The Cat"なんて兄ちゃんたちとか。ね、好きだったでしょ。
当時なら服飾雑誌にポーズ決めてた様な、でもこれはT-シャツで通りをぶらり、って感じ。もっとさりげない。メロディー/曲調/ボーカルの声に歌い方/コーラスの入り具合/少し深めなベースの音/ファンキーなカッティング・ギター。尖ったとこもザラツキもなく、メローで少し跳ねるような。溜息出るくらい、"あの"感じ。アイズレー・ブラザースのカバーも秀逸。ちょっとだけ、日常逸脱しながら家事したいときとか使えます。ぼおと聴きつつ、少し胸にキュンとしながら若気の頃を思い出すのもまたよろし。
13
sings Gardel/ Marcel Alvarez
(SONY CLASSICAL, 2000)

タンゴつうのは、どうも憂鬱な印象強くて、積極的に聴くことは無いんですよ。もっとも、ばりばりのアルゼンチン・タンゴなんて殆ど聴いたこと無くて、エヴァン・ルーリー(ジョン・ルーリーの弟さん)とかの所謂"紛い物"聴いてそう言ってるんだから、好きなヒトには何をか云わんやというとこかも。
さて、そんあ私がある日曜日の夕方、7時からクラシック音楽関係の番組(「マエストロ」ちゅうタイトル)をいつものようにぼおっと見てると、どうやら、あるテノール歌手とタンゴのオルケストルが古いアルゼンチンの歌手の録音を再現する...といったドキュメンタリーをやってたんですわ。希少な録音をバンマスと歌手が何度も何度も聴き返して、リハーサルを繰り返し、やっと納得いく録音を完成させるという。こう書くとありがちな話なんですけど、タンゴの歴史的な映像や、下町の様子などからめて描かれた番組で、タンゴ苦手と言ってた自分もぐいと引き込まれて...(一応「Marcelo Alvarez In Search Of GARDEL」つうのが英語タイトルらしい)。そのドキュメンタリーの結果が、このCD。
元々クラシックのテナー歌手だけあって、声の通りと言うか、脳天突き抜けて伸びまくるテノールが、自分の苦手な過度に叙情的でメランコリックな部分を吹き飛ばして、聴いてるとやたら元気になってしまうという。(この辺、昔合唱部だった体験とも関係ありか)
バンドネオンも、メリハリ効いててかつ過度に扇情的でないとこが好み。社交ダンス的なわざとらしさが無いと、こうも情熱的なボーカルものになってしまうのか...と。タンゴのイメージ大幅修正。クラシックボーカルの制御されたエナジーと、プロフェッショナルなタンゴ楽団のアンアサンブルが見事にはまった快作。コアな愛好家でない自分には、こういう奴の方が好み。

2006年2月