This is POP!! | ©gaburu
'01.01
29
Live at Luther Collage/ Dave Matthews and Tim Reynolds
(BMG Music, 1999)

テレビの音楽チャンネルでたまたま観た、デイブ・マシューズ+1のアコースティック・ライブ。これがもう鳥肌もの。特にもう一人のギター弾きに釘付け。それで興味持ったデイブ・マシューズ・バンドを何気にチェックするようになって、今回紹介するCD2枚組みを発見。件のライブを収録したやつかなあ...と、確認のため一度引き揚げると、次に行ったときにはもう無くなってる...(至極アリガチ)。その後、この盤こそが彼の映像のCD版と判って後悔しきり。
ところが、昨年末、再び発見。即、レジへ。いや、再会を感謝。これ、ホント傑作。
アメリカンフォーク、ブルーグラスの土と雨の匂いにジャズのグルーヴ、疾走感。2人だけで紡ぐギター・サウンドの阿吽な間と、瑞々しくスリリングな絡み、マイケル・スタイプ似でニュアンス多彩なボーカルがのせる詩情は、「ヘジラ」「ドン・ファン」辺り70年代中盤のジョニ・ミッチェルの感触。(低音弦の使い方がまた絶妙で、ジャコ・パストリアスのベースを髣髴させるところもあって、なおさら)中東風のメロディーをサイケなギターで盛り上げるA-10"ミナレット"からスパニッシュ風アルペジオがそこかしこに出てきたりと、エコー&ザ・バニーメンの「ポーキュパイン」「オーシャン・レイン」辺りを感じたりも(穿ち過ぎ??)
CD2枚全23曲。このボリュームでも一気に聴いてしまって、まだ物足りない(もっと聴きたい)。ジョニ・ミッチェル、テリー・キャリアー(このヒトも去年最大の発見のヒトリ:kim-igorさんに感謝)の系譜探してるヒトに是非お薦め。さらに、80年代のネオ・アコースティック、サイケデリック好きにもどうでしょう。
ところで、デイブ・マシューズ・バンドもこの感じなのかな?
22
Body Acoustic/ Michiel Borstlap
(EMARCY, 2000)

ここのところ、ジャズ関係のヒトが創るジャズ"的"サウンドが続いてますけど、今回は全きジャズ。オランダは、ミシェル・ボルストラップ氏の、「ウェザーリポート」トリビュート・アルバムをご紹介。
ウェザー・リポートは、鍵盤奏者ジョー・ザビヌルが結成したジャズ/フュージョン・バンドで、ウエイン・ショーター(Sax.)ジャコ・パストリアス(Bass)、ピーター・アースキン(Drum)、アレックス・アクーニャ(Perc.)を擁した70年代中盤のラインナップは、最強のヒトコト。そもそも、所謂"エレクトリック・マイルス"と呼ばれた1969年「ビッチズ・ブリュー」以降のマイルス・デイビス・バンドで要だったザビヌル氏が中心ということで、電気的でかつ神秘的な演奏と楽曲で、未だに褪せることなく先鋭的。 その代表曲を、完全アコースティック・ジャズで編曲、ライブ録音。
とにかく元曲と丸っきり感触の違う音で、曲の構成も殆どオリジナルと思えるくらい変わってる。ピアノがミステリアスなリフを延々ループする上に、リリカルなサックスが転がる"疾走"あれば、クリアな音色で絡みつくギター。生ドラムの深くて柔軟、だけど手数足数多いスイング感。楽器毎に見れば所謂モダン・ジャズ風とも言えるんだけど、ミニマルで抽象的。現代音楽風ですらある幻視的な気持ちよさ。終曲に持ってきた超有名曲「バードランド」なんて、原曲の楽園的な雰囲気微塵も無いし...。
元ネタだけに、アコースティックなビ・バップ・ジャズだけど、ロックっぽいテイストもあり。ウェザリポート知らなくても、楽しめること請け合い。ジャズに日頃親しみ無くても、多分体感できるジャズの気持ち良さ、というか。ウェザリポート好きから、ジャズ初心者まで幅広く、そして、かなりお薦め。
15
Um...Er...Uh.../ Eric Mingus
(Sugnim Cire Music, 1999)

トリッキーやマッシブ・アタックをトリップホップと呼ぶなら、これはトリップ・ブルースとでも。ジャズ・ベーシスト/ボーカリスト、エリック・ミンガスのソロ・アルバムは、バリー・アダムソンの描く世界に極似した、薄暗くハードボイルドな音世界。でかつ、ポップなジャケ絵は、ジョン・ゾーンも嵌ってた50年代日活アクション映画風。
うねるウッドベースの硬く深みのあるゴリゴリした音は、所謂アコースティックな暖かさとは無縁。これが、サウンドの軸。で、ボーカルも絶品でして、エモーショナルにドス効いた声で「Come with Me. Shake up the world」なんてフレーズをきめれば、スキャットも上手。なによりチャット(喋くり)風の低音語りが、リズムともども心地良いし、渋いのですわ。
ギターはかなりの業師。ノイズから浮遊感ある演出、ロッキンなメロディーも。固めのタイコ、パーカッションと一緒にスタイル変えながらのいぶし銀。微弱にツボ抑える、電子音・SE。抑制効いたサウンドながら、しっかり世界観を主張してる、それこそ、ブリストル系のテクノビート好きにもしっくりくるような薄暮な感じ。
実は、以前お薦めした「Karen Mantler's Pet Project」にボーカル、ベースで参加。それで、名前が引っ掛かってた(ベーシストでミンガスとくれば、故チャールズ翁を思い出すでしょ)ところに、この盤を発見。やはり、チャールズ・ミンガスの息子だそう。楽器演奏者としてだけではなくて、詩世界まで含めた音像構築のセンスもタダモンではないあたり、親父譲りの「血」なのでしょうか。
08
SUPERSMELL/ MARDI GRAS. BB
(Universal Jazz Germany, 2000)

痛快なブラス・バンドものを一発。
無理やり言い切ると、「ニューオリンズ・ジャズを演る東京スカパラダイス・オーケストラで、憂歌団の木村充輝氏が歌う」っちゅう感じ。メンバーの立ち姿見ても、その"スカパラ"つう感じ(キザでキッチュで意外に熱い、ルパンⅢ世的二枚目(敢えて二枚目と...)の鯔背)わかって貰える筈。
ニューオリンズ音楽に拘るだけあって、ドラムス、ベース&ギターのリズム隊ではなく、チューバの吹くベースラインが、ドシャメシャと黒い太鼓と絡むブットさがまた気持ち良い。ホーン・セクションの切れも絶品。それに、サンプリングやらスクラッチ音などのSEが合いの手入れるところが、また、トランジスタな演出で擽られます。確信犯的にその辺突いてくるあたり、ラテン・プレイボーイズあたりにも通ずるか。
 
このマルディグラ・ブラスバンド、昨年はじめに1stアルバムを出してて(つまり1年間に2枚)、これもまた格好良いんですわ。こっちは、アナログ盤の雰囲気出すために、わざとノイズ入れたりとか、音もわざわざこもらせたりと、かなり凝った作り。そういうギミックが嫌味じゃなく決まるところが、また"粋"でありゃあす。
 
ALLIGATORSOUP
(Hazelwood Music, 1999)

尖がったジャズ風クラブ・サウンドも良いけど、やっぱり飄々と笑かしつつ躍らせてくれる、こういう音が好きだなあ。(これはこれで、めっちゃクールなんですけどね。
02
Generator X/ Audun Kleive
(Jazzland Records, 2000)

今年一枚目は何で行こうか...なんて気負わずいきましょう。年末の(また現在も)ドライブ・ミュージックに重宝した、北欧はノルウエーのジャズ・ドラマーのソロアルバム。
生ドラムとムーグ、エミュレータ、サンプリングなど電子楽器が絡む、一種のドラム&ベース。キーボード・シンセの音色が、70年代のジャズ・フュージョンぽい(ウェザーリポートとかスティーリー・ダンとかね)ところが、滅茶苦茶恰好良いわけです。ミュート・トランペットが響く熱くクールな感じは、所謂エレクトリック・マイルス(70年代のビッチズ・ブリュー以降)のジャズ・ロック風でもあり(こっちは、も少しシンプル)。#1,3,4は、Jan Bangを除く4人の最初のセッションを一発録りしたものを切り貼りして再構成したもの。で、#2,5は、10ヵ月後に行ったツアーをJan Bangが、ライブサンプリングしたものを元にしてるということ(自筆ライナーから)。
なるほど、ライブの有機的な絡み合いと疾走感が、自然に解体されてる不思議な感覚は、そういう意図した録音手法もあってのことか。ワイアーなんかにも通じる、無機的というか無人的な肌触りと、生演奏的なグルーヴが同居する、面白い音。一方で電子音やノイズの挿入が、ジャズ的なアンサンブルの一体感を、逆に壊して見せたり、確信犯的な"揺らぎ"の使い方が、テクノ的とも言える。例えるなら、B2ユニットを少しジャズ寄りにした感じとも言えるか。そういう、無機的で空疎な風が妙に気持ちよい。

2006年2月