This is POP!! | ©gaburu
'00.09
30
Whole Lotta Live 1998/ James Tayler Quartet
(JTI, 1998)

アシッド・ジャズ(って、どっこいまだまだ生きてます)の今や大御所、ジェイムズ・テイラー・カルテット(JTQ)の1998年のライブ盤。
テイラーのオルガンを中心にした、相変わらずの滅ッ茶苦茶グルーヴィーに疾走するファンク・ジャズ・サウンド。ひたすら気持ち良さと、カッコ良さを追求した、タイトなバンドアンサンブルが堪りません。(いや「堪らん」と思わず唸る以外に表現しようが無いですわ、ホント。)
テイラー氏のオルガンも良いですけど、ファンキーなギターが凄いですねえ。デビュー時の、流行に乗った勢いだけのサウンドからは、見違えるほど一体感と軽やかさに溢れてます。(昔の奴を今聴くと、ホント下手...)
結構まめにアルバム(ライブ盤多し)出してて、去年はイタリアでのライブをリリース。ですが、選曲で今回はこの盤をお薦めします。オルガンインストの超名曲「グリーン・オニオン」(ブッカーT&MG's)で幕開き、定番の「2001年宇宙の旅」のテーマから、レッド・ツェッペリンの「胸一杯の愛を(Whole Lotta Love)」、とどめは何と「スタスキー&ハッチ」のテーマ。勿論、アシッド・ジャズの守護神的名曲、ハービー・ハンコックの「Blow Up」も収録。
これからぼちぼち寒くなる季節。体の芯から暖かく、だけど外気の冷たさも心地良い、そういうライブ・サウンドはどうでしょ。
23
best of Average White Band
(Repertoire, 1998)

我が愛しの鈴木さえ子女史の2枚のアルバムがCD化されるらしいです(「科学と神秘」、「I wish it could be Christmas everyday」)。所謂YEN関係のレコード(立花ハジメの「H」とか)で女性ドラマーとして活躍。自らも数枚の傑作ポップ・アルバム(XTCアンディ・パートリッジブルー・ナイルのアンディ・ベル氏らも参加)を発表。
その鈴木さえ子女史が、とあるラジオ番組で、好きなドラムとして挙げてたのが、このAWB(アヴェレージ・ホワイト・バンド)の初代ドラマー、ロビー・マッキントッシュ。...という訳で、鈴木さえ子嬢CD化記念に、このAWBをご紹介。(長いふりで御免...)
 
めっちゃ苦茶ファンキーなソウル・ミュージックを決める、白黒混成バンド。ずうっと、アメリカのバンドだと信じてたんですけど、実は、英国はスコットランドの出身。とは言え、英国っぽさ皆無。全く北米西海岸。とにかく、代表曲の「Pick Up The Pieces」と「Cut The Cake」はファンク、ソウル好きならずとも必聴。とにかくギター、リズム隊、ホーンセクションが濃く(タイトなんてもんじゃあない)絡むグルーヴは悶絶すること間違いなし。(え?悶絶したくない??)
このベスト盤は18曲収録ですが、やはり2ndアルバム(1974年)までのファンク色強いベースとタイコが引っ張る腰の据わった疾走感が出色。タワー・オブ・パワーとかの所謂ベイ・エリア・ファンクのタイトで柔軟なアンサンブルが好きなら、必聴。ベスト盤はいろいろ出てますけど、「When Will You Be Mine」が入ってる奴を(であれば後はどれも似たようなもん)。あと、2nd「AWB」は是非とも。
16
Amenaza al Mundo/ Fantomas
(Ipecac Record, 1998)

コミック風のジャケット絵に滅法弱い自分ですが、ロンドンのレコード屋の、アルタネイティブ・ロックのコーナーでこのジャケットを目にしたときも、当然引寄せられるように手にとった訳です。で、良く見ると"Mike Patton"の名前が。
フェイス・ノー・モアの変態ボーカル野郎、マイク・パットンが、ミスター・バングルの盟友ベーシスト/トレヴァー・ダン、メルヴィンズのギタリスト/バズ・オズボーンらと結成したのが、この"ファントマズ"。この面子で想像できるとおりの、変態的圧縮ハードコア・サウンド。
パットンのボーカルは、山塚アイ直系の絶叫から、囁くような甘いボーカルまで、変幻自在。(ボーカルというよりヴォイス・パフォーマンス、つうかもっと原始的に「発声」というべきか)スクラッチ・ノイズやタイトなリフで縦横無尽なギター、ストイックにゴリゴリとビートを刻むベース、シンプルだけど表情豊かなドラムス。ストリート・ノイズや、いきなりケチャが入ったりするエキゾチックなSEも絶妙。ハードコア・メタルではなくてアヴァンギャルド・ポップといったところか。とにかく、ネタとアンサンブルが自在で全然飽きません。
ノイズの塊と変拍子、それに諧謔(遊び心)。一見凶暴に見えて、実はロマンティック。原始的で、理知的。ジョン・ゾーンのペイン・キラー、瞬間ハードコア芸のナパーム・デスとか(取り敢えずボアダムスも入れとこうかな)が気持ち良いヒトには絶好。コーンとかでも最近物足りないなあという、ハードコア・ロックなヒトにもお薦め。
09
Stereo-Typical/ The Specials
(2 Tone Records/EMI Records Inc., 2000)

初期パンクロックのエネルギーとジャマイカの60年代ポップミュージック"スカ"を融合させた、70年代後半パンク直後の"スカ・リバイバル"。自らツートーン・レーベルを起こしムーブメントを牽引した中心バンドが"スペシャルズ"。
今週のお薦めは、スペシャルズ/スペシャル AKA関係の全シングルA/B面とレアトラック集、CD3枚組み。disk1のスペシャルズの数々の名曲も思わず体が動いてしまうスピードと躍動に満ちてますが、とにかく嬉しいのは、未だアルバムがCD化されないSpecial AKAの音源がほぼCD2枚に渡って収録されてること。個人的には、アルバムには収録の名曲「Housebound」 「Alcohol」が無いのがちと残念ですが、シングル中心の編纂とあらば、いたしかたなしか。
アルバム未収録曲もあり、収録曲の異バージョンもあり、で、オリジナル・アルバム好きなヒトも十分納得の内容。アフリカから中南米(ブラジル、キューバ、ジャマイカ...)、そしてジャズ、R&B、ソウル...。融合した上に、パンクの狂騒から解脱したクールネス、それでいて強いメッセージ性。(そういう意味では、スライの「暴動」のような雰囲気と言えるかも) 80年代UK最高のサウンド・クリエーターと言っても過言ではない、ジェリー・ダマースの天才が詰まってます。
この3枚組みに下の2枚組みコンピレーションをあわせれば、スペシャルズの結成前から90年代始めまでのスカ・リバイバルの歴史が俯瞰できる。という訳ですが、スペシャルズ初体験の方は、オリジナル・アルバム2枚を、是非とも先に。
02
Karen Mantler's Pet Project
(Virgin, 2000)

カレン・マントラー嬢の愛猫「アーノルド」が死んでしまった。さて、悲しみに暮れるカレン嬢が、立ち直り次のペットを探し求める...その過程を追ったドキュメンタリー・ジャズ(なんのこっちゃ)。いかにも企画物/一発ネタの胡散臭さ。で、ジャケットが上の写真のとおりですから、これで食指が動かなければ何を聴く、ですな。因みにプロデュースがスティーブ・スワローということで、サウンド・プロダクションに関しては安心して、買い。
アーノルドの死を悼む1曲目。「マルサの女」風とでもいうのか少し怪しげなテーマ、「アーノールド!」という間の抜けた呼び声から、やにわハイラム・ブロックの太いロックギターソロが切り込む展開に思わず爆笑、いや感動。男友達らが次のペットについてあれこれ議論する、サルサ調#3。ミニマルなピアノを軸にした#4。ファンキーでクールなブラス・セクションが締める終曲#10。バラエティーに富んで、かつ聴かせる構成。バックのサポートとプロダクションがかっちりしてて、決して半端な出来ではないです。マントラー嬢はピアノ、オルガン、ハーモニカ、そして無論ボーカルで活躍。どれもまあ、上手くは無いですけど、一寸投げやり...でもコケティッシュなボーカルもなかなか良い味だし、ハーモニカがまた効果的。
この手の"お遊び"にピンとくるヒトは是非お試しあれ。だけど、真面目にジャズを聴きたいヒトには怒りを買いそう...。
調べてみると、実は過去にも「私の猫 アーノルド」「カレン・マントラーと愛猫アーノルド風邪をひく」というアルバムが出てて(これが何とECMから)、実はこれがシリーズ第三作らしい。つうわけで、早速前2作も注文。これもジャケ写が決め手です。

2006年2月